二次元美少女と恋をしたいっ!←そんなことさせないですよ?

ハタケシロ

第91話 ホテルに行きましょう!

桃とのデート(疲れる)を終えた俺は、明日もあるデート(行きたくない)について色々思いを馳せながら帰路につこうとしていた。

ポロン

メッセージが来たことを告げる通知が鳴った。
いつもならすぐに開いて確認するのたが、何故だろう……。
今の俺はこの通知がとても嫌な予感がしてならなかった。
もしかして俺はニュ〇タイプにでもなってしまったのかもしれない。
なんでって?
なんでといえば、

霧咲

私とのデートは始まってますよ!

やっぱり嫌な予感は的中していたからだ。

ポロン

霧咲

今、日本にいます!

うん。だろうな。
こいつは何を言っているんだ?
まぁ、霧咲の言動に対しては毎回毎回理解したことはないんだが。

ポロン

霧咲

今、交差点に居ます

交差点に居ます?
なんでこいつはこんなことを一々報告してくるんだよ。

ポロン

霧咲

今、大通りを過ぎました!

大通りを過ぎた?
てかなんか霧咲のやってることってなんだかメリーさんみたいな……

ポロン

霧咲

今、陽向さんの後に居ます

心臓が止まるかと思った。
いや、なんの冗談だよ霧咲。
やめてくれよな?そんな冗談は。
俺は、そう返信しようとスマホに文字を入力しようとしたのだが、背後にさっきまではなかった人の気配を感じた。

俺がいるのは薄暗い細い一本道。
街灯は一つだけで、周りは愚かその周辺すら映しているのかも怪しいくらいの光。
しかし、確実にそこに人の気配を感じる。
俺の見聞色の〇気が洗練されているのかもしれない。

すごく怖い。
こんな薄暗い一本道に人の気配を感じるのがこんなに怖いことだとは知らなかった。
こりゃ女の子1人では歩きたくないわけだ。

ただ一つだけ安心できるのは、この人影が霧咲で間違いないということだ。
だってさっきからすげースマホから通知音なりっぱなしだし、ちらりと見た内容は早く振り向いてくださいだのパンツが勝負してるだのよく分からないことだらけだからだ。

でも、もしかしたら霧咲じゃないかもしれない一抹の不安の中俺は勇気を出して振り向くことにした。

「陽向さん!!ホテル行きましょう!!」

「俺の今までの時間を返せ!!霧咲ぃいいい!!」



「で、お前はなんでここにいるんだ霧咲」

「それは明日から私とのデートじゃないですか!なので」

明日からデートなのになんで今霧咲はここに居るのだろう。
疑問が深まる中で霧咲はこう答えた。

「一緒にホテルに行こうかなと!」

回答になってねぇ!!

「よし、もう一度聞こう霧咲。なんでここにいや、なんでそのホテルに行こうとしてるだお前は」

「そんなの決まってるじゃないですか!陽向さんに対するこの溢れんばかりの思いが、そりゃもう溢れすぎて行動にうつしちゃったからですよ!」

「そんな思いは捨てちまえ!」

「酷い!?」

「よし、とりあえず帰れ!つか帰れ!帰ってくださいお願いします!!」

「そんなに懇願されてまで帰れと言わなくても……とりあえずホテルに行きましょう!!」

「ちくしょう!!会話が成り立たねぇ!!!」

「大丈夫です陽向さん!準備は万全!親にもちゃんと男の人と泊まりと言ってきたので安心です!」

「なんも万全じゃねぇだと!?」

「ちょっとお父さん激昴してましたけど、お母さんがおばあちゃんになるのも近いのねってニコニコ言いながらお父さんを止めてたので大丈夫です!」

「なんも大丈夫じゃねぇし!安心できねぇし!」

もうなんなんだこいつのこの行動力は!!
ものの数分で疲れたわ!!
それに顔も知らない霧咲の父親に殺されるかもしれなくなってるし!

「あ、もしもしお父さん?」

おや?

「え、名前?」

名前って、ちょっとまった!!

「陽向さんだよ?」

……なんてこった。
殺されるかもから殺されるに変わっちまった。



「どうして涙目なんですか?」

「そんなの決まってるだろ?」

お前のせいだろとは言えなかった。
霧咲はべつに悪気があってやってるわけじゃなさそうだしな。
悪気があるようにしか見えないが。
何が悲しくて、クラスメイトの女の子の父親に名前を知られたあげくいろいんな誤解をされなきゃいけないんだ。

「私の胸で泣いてもいいですよ!」

そう言うと霧咲は、両手を目一杯広げて俺を迎え入れる体制を作った。

「どうしてそんな残念そうな顔で見るんですか!」

「いやだって1ミリもなんというか、欲情が湧かない」

「女の子に対して酷すぎますよ!」

いやだってねぇ?
女の子の無駄に発達している胸でなんで泣かにゃならんの?

「てかなんで休みなのに制服着てんだ?それにはのデカいカバンは?」

「よくぞ聞いてくれました陽向さん!この格好とカバンには訳がありましてね」

持っていた大きなカバンを地面に置いた霧咲は、ガサゴソとその中身を漁り出して俺に見せつけてきた。

「陽向さんがどんなコスプレをご所望になるか分からなかったのでカバンに入るだけ詰めてきました!制服は着てけば一石二鳥なので着てきました!」

手に持っているのは、多種多様のコスプレ着。
それと1枚の紙切れ。
その紙切れを見てみると、
最近のひにゃたしゃまはナース服がお気に入りのようです希桜というメモが。

なんで知ってんだよ!
じゃない!
あのやろう!!

そういや希桜で思い出したが、友人部の新入部員3人の歓迎会やってないな。
まぁ、これまで歓迎会ってものをやってはないんだが、3人も新入部員が入ったし、多数の部活ものアニメを見たらやってるのが多いからな。

なーんて、今目の前で起きているカオスな状況から目を背けていたら、霧咲はおもむろに服を脱ぎ出した……って脱ぎ出した!?

「おい霧咲!?いや霧咲さん!?なにをやっていらっしゃるのですか!?」

部室ならいつもやりそうな行動だが、人気が全く無いとはいえ野外で脱ぎ始める霧咲。
動揺しすぎて敬語になっちまったし、つか部室でもやんじゃねーよ。

「陽向さんは野外でこうやって女の子が裸になるのが好きと、とある情報源から聞いたもので」

その情報源って絶対希桜だろっ!!

「んなっ……んなわけないだろっ!?」

ここで即答できなかったのは、俺が男の子である以外なんでもない。
俺だって男の子だもの!!

「今ちょっと口ごもりましたよね!?」

ちっ気づいたか。

「いいから早く服を着ろ!誰も居ないとはいえ誰かに見られたらどうすんだっ!」

少し強めの口調で霧咲を叱責した俺は、もう上半身をほぼ脱ぎ終え、下着姿になっている霧咲の手を止めた。
俺が強い口調で怒ったせいか、霧咲はハッとして固まっている。

「陽向さん……」

さすがに強めに言いすぎたか。
いやでもこれは強めに言わないとだめだろ。
それに、こんな状況にしたのも霧咲が悪いしな。
というか霧咲しか悪くないな。うん。

ぽつりと俺の名前を呟いたあと、霧咲は顔を俯け俺と目を合わせないようにした。
ここでようやく自分が何をやっているのかという自責の念に囚われたのだろう。
さすがに暴走がすぎたと思ったのか、長い沈黙のあと霧咲はこう言った。

「ホテルに行きましょう…!!」

とても蕩けた顔で霧咲はこう言ったのだ。

……

……

……

……

……

……

……

……

……

!?


「はぁ!?」

一瞬霧咲の言った言葉の意味が分からなかった。
ホテルに行きましょう?ホテルに行く?
いや、ホテルに行きましょうはホテルに行きましょうか。
とても頭が混乱してるな俺は。

てかなんでこの流れでまたホテルに行くって言えるんだこいつはっ!!!
自責の念に囚われてたんじゃねーのかよっ!
それは俺が勝手に思ってただけかそうですかこんちくしょう!!

「どうしてこの流れでそれを言えるんだ!?」

「言えるも何も始めからそう言ってるじゃないですかっ!」

「確かにそうだったなっ!ってちげーよ!なんでまた言ったんだよ!」

「そんなの陽向さんと行きたいからに決まってるじゃないですかっ!」

ストレートすぎてなにも言い返せなかった。
ていやここは言い返さないと!

「俺は今おまえに怒ってるだぞ!?分かってるのか?」

「もちろんです!」

「じゃあなんで?!」

「それは私を大事に思ってるからですよね!?」

違くはないが、違うとすごく言いたいっ!!
このままじゃ霧咲のペースにどんどん持ってかれる!!
俺も見聞色の覇〇を鍛えて少し先の未来を見れるようになりたい!!

「その大事に思ってくれているというのと陽向さんの優しさを私のこの胸は許容量が超えました!なので行きましょう!!」

「行かねぇよぉおおおお!!!」

俺の魂の叫びが人気のない道で大きく響いた。

コメント

  • ハタケシロ

    また気長にお待ちください!

    0
  • あいす/Aisu

    久しぶりの更新感謝です!
    次も楽しみにしてます。

    0
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