二次元美少女と恋をしたいっ!←そんなことさせないですよ?

ハタケシロ

第17話 三人目

柏木を助ける。

それはたんに、木城から助けるというのではなく、柏木を「孤独」から救うということだ。

簡単なようで難しい。

孤独を感じるのは人それぞれの感じ方だ。
どこまでが孤独じゃなくてでどこからが孤独なのかは人それぞれの、その人しか分からない感じないことだ。

だが、俺は救いたい。いや、救って見せる。

俺がーー俺たちが。

でもその前には木城と柏木の関係にケリをつけなければならない。

まずはそこからだ。



「柏木、木城の居場所知ってるか?」

「知らない……ていうか、あんた木城に何かする気?」

夕日が差し込む病室で、黙っていれば桃や霧咲と肩を並べるくらい美少女な柏木を見ながら木城の居場所を聞く。

うむ。美少女ゲームでは女の子と二人っきりになったらお楽しみタイムに突入する流れなんだが、いかんせんここにいるのは黒髪三次元美少女。美少女なんだけど不良。たまに見せる眉間に皺を寄せる動作とかをみると背中がゾクゾクするね。怖いって意味で。

柏木は俺が木城の居場所を聞いたのが不思議でならないのか疑問符を頭に浮かべるように眉間に皺を寄せた。普通に怖いな。

「何かするって言えばするな」

「なんで?ていうか、いいよ何もやらなくて。私はあんた達が居るし」

俺を真っ直ぐに見つめながら、さっきとは打って変わって優しい表情を作る柏木。夕日が顔を照らしてかいつも以上に美少女ぶりが増していた。

だが、残念だ。けい〇ん!の澪には程遠い。

「おい。なんだ今の残念だって顔は?……いや脅してないから。そのガクガクいってる膝を早く止めろ」

べ、別にび、ビビってねーし。



昨日の俺たちが柏木に言った、もう友達だろと言う言葉を柏木は思い出したのか、柏木は俺たちが居るからいいと言ってくれた。でもそれななおさら何もしないわけにはいかねぇじゃねーか。

「何もしないわけにはいかないだろ?」

「だからいいって。なんであんたは木城にそこまでなにかしようとしてるの?」

「決まってんだろ」

立ち上がり、夕陽をバックに柏木に言う。

「お前が俺たちの友達で、その友達が怪我負わされたんだ。黙ってるわけにはいかない」

友達である柏木を木城は怪我を負わせたんだ。
友達がやられて動くには十分な理由だろ。

そして、俺は内心、「決まった」と思っていた。なんてたって夕陽をバックに青春っぽいことをカッコ良く言ったんだからな。できれば二次元美少女ヨメたちに言って、やってあげたかった。

柏木はふっと笑ったあと、優しい顔でこう言った。

「残念。逆光で顔が見えなかった」

「そ、そうか」

俺は恥ずかしい気持ちを抑えながらゆっくりと椅子に腰を下ろした。ていうかもう帰りたい。

「でもカッコよかったぞ瀬尾!」

「そ、そうか?」

「セリフは」

「んにゃろー!!」

「はは冗談冗談」

久しぶりに、いや、初めて声をあげて笑った柏木を見たかもしれない。それゆえに、顔に体に所どころに残っている傷が痛々しかった。

「……ありがとな。瀬尾……」

「ん?なんだって?」

「な、なんでもねーよ」

「そうか」

ありがとうか。

柏木の口から聞けるとは思わなかったな。

よし、一丁じゃやりますか!

友達に怪我を負わせた木城に報復を。



「暴力はダメですからね?」

「分かってるって。つか、暴力とか怖い」

「どの顔と口と体つきで言ってるんですか?」

「お前それ、俺自身全てをさしてるよな?」

こいつは俺のことをどんな風に見てんだよ。
まったく、俺は善良なる一般生徒なのに。

部室で俺と桃、霧咲で柏木に怪我を負わせた木城にどうやって報復するかを考えていた。

さっき桃が言ったように、報復と言っても暴力行為はやらない。つか、やりたくない。怖い。

報復と言えば大げさに聞こえるかもしれないけど、要は柏木に一言、謝罪をしてもらいたいのが願いだ。謝罪があるだけで色々と変わると思うし。

「私は陽向さんの顔も口も体つきも、頭の先の繊維の一本からつま先の細胞まで全部好きですよ?」

「うん。霧咲。今そういう話はしてないからな」

まったく、霧咲の相手をすると疲れる。
いくら茶髪美少女だろうが、三次元なら意味がない。二次元ならよろこんで相手をするんだけどな。

「わ、私だって!陽向くんの」

「なんでお前まで張り合うんだよ!」

つかなに?なんの暴露大会?
俺なんかの細胞を好きになって何がしたいんだ?
研究でもする気か?

誰もいない科学室で……おっとこれは前にやった美少女ゲームの内容だった。

「まぁ、とにかく。木城を探して柏木に一言謝罪をさせる!それでいいな?」

話を強引に戻す。
そうでもしないと変な方向に話が進むからな。
霧咲によって。

「はい。私もそれでいいと思います」

さっきとは違って、冷静になった桃が同意する。

「私はもとより陽向さんの意見に賛成です。陽向さんに付いていきます!……一生」

なんか変な言い回しのような気もするが霧咲も同意してくれた。しかし、何故か背中がゾクゾクした。



「ここか……」

目に映るのは、よく不良たちがたむろしていそうな廃工場や空き地ではなく……


「豪邸じゃねーか」

思わず声がこぼれてしまった。
だってそうだろ?
あのなりで不良で、こんなにすんごい豪邸に住んでんだぞ?木城のやつ。
なんで不良なんかやってんだよ。


柏木に木城の居場所を聞こうとしたが、柏木は知らないと言った。そもそも柏木と木城が初めて会ったのは駅前で向こうから声をかけてきたそうだ。そこから柏木と木城の関係は始まったらしい。

柏木曰く、友達でもなんでもないやつの家なんて、居場所なんて知らないし、別に知りたくないらしい。たしかに友達でもなんでもないやつの家なんて知らないだろうし、知ってもなんも意味もないだろう。遊びに行くわけじゃないんだし。

しかし、木城の居場所がわからないと困るのは俺たちだ。俺たちはどうにかして、居場所を突き止めようとしたが、たかが高校生にそんな簡単に出来るわけもなく、何か知らないかと思い先生に聞いてみた。

すると、何と言うことでしょう。
知ってたよ木城の居場所。

先生何者?

先生に聞いた住所(まず住所を知ってるのがすごい)を頼りに来てみたらこの豪邸が建っていた。

「うわ〜すごいお家ですね〜」

桃、お前もすごい家に、いや今は一人暮らしだったな。

「私は陽向さんと住めるなら小さくても……なんなら1Kでもいいですよ!むしろ1Kがいいです!」

霧咲はほっとこ。

何が起きるかわからないから付いてくんなと二人には言ったのだが、こいつらが俺の言うことをすんなりと聞くわけもなく付いてきた。

まったくなんかあったら危ねぇーのに。

でもまぁ俺が想像してた廃工場とか空き地じゃなくて、豪邸だからなー。そうそう危ないことなんて起きないだろう。たぶん。うん。美少女ゲームだと色々あるけどねっ!

「ふふん。あまり危なそうには見えませんね?陽向くん」

どや顔がうざい!

「いや、もしかしたら危ないことがあったり、起きるかもしれないだろ?この家の主が鬼畜とかで桃と霧咲を飛ん捕まえで色々やったり」

「陽向くん、ゲームのしすぎですよ?」

まぁたしかに、現実リアルでそんなこと起こる方が滅多にないけどな。美少女ゲームとかならめっちゃあるけど。

「それと、その、何て言うんですかね?私たちに何かあっても気にもとめなさそうな言い方は」

「ん?いや、さすがにお前らに暴力振るってきたらコノヤローとか思うぞ!」

「暴力以外は?」

「………」

「ひどいです!暴力以外なら私たち何されてもいいんですね!?」

「だって3次元じゃん。おまえら」

「なんででしょう?初めて3次元に生を受けたことを後悔しました」

3次元の女の子のためにあれやこれやをするんなら俺は、二次元美少女と仲良くなる方法を模索するぞ!

「まっここで言い合っててもしょうがねぇし、さっさっと木城を出してもらおう」

「そうですね」

よしと、じゃあ木城を出してもらうか。

「…………」

「どうしました?」

「インターホンがない……!」

「あぁそれならこれですよ」

そう言って桃が指差したところにはインターホンがあった。うん。あった。

「えらく立派なインターホンだな」

「そうですか?普通だと思いますけど?」

「タッチパネル式なんて初めて見たぞ」

桃は見慣れてるだろうが、俺とかタッチパネル式のインターホンをさっきから凝視している霧咲とかはな見慣れてねーんだよ。リアルお嬢様が!!

「とりあえず押す、タッチ?するぞ!」

「おい。人んちの前で何やってんだ?」

タッチパネルにもう少しで人差し指を付けようとしたところで聞き覚えのある声に動作を止められた。

「ーー木城」

「ぁん?あの時の……白髪か?」

木城は俺のことを覚えていたようですぐに睨みをきかせてくる。あの時、俺に腕を掴まれたのがよっぽど嫌だったんだろ。

「何の用だ?あの時の女二人も連れて」

「柏木のことだ」

「柏木?」

怪訝そうな表情を浮かべる木城。
俺はそれを見て続ける。

「あぁ、お前柏木に暴力振るったろ?」

「それがなんだ?」

さも、当然とした表情で答える木城。

ー落ち着け俺。こんなやつにキレるな。

「一言あいつに謝罪してくんねーか?」

「なんで?」

ーやばい。我慢でき

「なんなんですか!」

俺が我慢の限界を越えようとした時、隣にいた桃が声を出した。

「あなたは柏木さんに暴力を振るったんですよ!?それも柏木さんから理由を聞いたら陽向くんにやられた腹いせらしいじゃないですか!それなのにさっきからその態度」

「うん!ひどいと思う!」

桃が言い切る前に今度は霧咲が声を出した。

「女の子に手を出したんだよ!?それも傷が残るかもしれない程のやつ!なのにあなたは!」

悪びれもしてない!
と霧咲は最後にこう言い放った。


「それが?」

「「……っ!」」

1歩踏み出した二人を押しとどめて俺が前に出る。

桃たちが口で頑張ったんだ。あとは俺の番だろ。

別に暴力・・は振るわない。だけど、は振るわせてもらう。

でも、最後に確認しておこう。

「謝罪する気は?」

「は?なんで?」

確認完了だ。


「……!いでぇ!」

前とは違う腕を掴み握力自慢をする。

「木城!これが柏木の負った痛みだ!」



「よっ」

「今日も来たのあんた……」

「友達の見舞いにくらい普通来るだろ」

「そうですよ。柏木さん」

「陽向さんの言う通りです」

「たち……」

夕日が差し込む病室で柏木を囲みながら談笑している桃と霧咲。うん。画になるな。……3次元じゃなきゃいいのに。

「そう言えばさっき、木城が来たよ」

「そうか」

「一言、すまんっていって去っていった」

「そうか」

「ふっ。なんでもない風に装ってんだろうけど、目、泳いでるぞ瀬尾」

「な、ナンノコトダ?」

「ふっ。そういうやつだもんなお前は。……お前のためになら腹を痛めてやるのも悪くないな」

「俺はお前を殴らねーぞ?」

「そういう意味じゃないんだけどな」

「えと、ということは……」

「赤ちゃん……」

おい!
3人だけで分かるような話をするなよ!
仲間外れみたいで寂しいじゃねーか!

「友達に裏切られて、病んでた私を木城が声をかけてくれた時は嬉しかった。けど、あいつとは変な関係になっちまったからな。余計に友達なんてって思うようになっちまった」

これが柏木が友達なんか要らねぇって言ってた原因か。

「まぁ、でも今はお前たちがいる。……ありがと」

「「「…………」」」

「黙るなって。あっそだ、これ渡しとくよ」

そう言って柏木は俺に一枚の紙を渡してきた。

「入部届け。私も入るよ友人部」

「あぁよろし」

「よろしくお願いしますね!柏木さん!」

「私もよろしくお願いします!」

俺を差し置いて挨拶を交わす桃と霧咲。
いや、そこは少しくらい待ってくれよ。

こうして、また新たに部員が一人増えた。
こんどのは不良だけどアニオタだ。
活動方針に則っている部員が増えた。

柏木が部員になるまで色々、いやこれからも色々あるだろう。なにはともあれ、部員が増えたことは嬉しい。

俺は最後に柏木に言った。

「柏木」

「ぅん?」

「お前って丸文字書くんだな」

「……っ!」

鳩尾にキレイなストレート入りました。

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