二次元美少女と恋をしたいっ!←そんなことさせないですよ?

ハタケシロ

第55話 さらさらない

誰も居ない用具室で2人きり、金髪縦ロール3次元美少女とその3次元美少女の口を手で抑えているオタッキー1名。

っべー犯罪の匂いしかしねー。
犯罪感半端じゃないんですけど!

「ん!んんん!んん!」

俺に口を抑えられて涙目になりながら3次元美少女、セラフィは何かを言おうとしている。
さーて現在進行系で犯罪してるぞー俺は。

「よ、よし。まじゅは落ち着け!いや、落ち着いてください」

俺自身が落ち着いてない中、どうにかセラフィに対して落ち着いてもらえるよう話す。
俺の必死の説得が通じたのか、セラフィは首をこくんこくんと小動物のように、犯罪に巻き込まれた美少女のように首を振った。

「よし。じゃあ手を離すからな?くれぐれも大きな声はださいよう……出さないでください」

まだ近くに誰かいるかもしれない。
今ここで大声を出されたら俺は社会的に死んでしまう。ここは、下手にでないといけない。

俺は、セラフィが頷いたのを確認してからゆっくりと手を離した。

「……ぷはっ」

俺から手を離されたセラフィは、軽く呼吸をすると、怯えながらされど、しっかりとした口調で。

「この変態っ!」

と御おっしゃった。

「ごもっともです」

正論過ぎて、誤魔化し用が気かな過ぎて、俺は何も言い返せない。

「こ、ここで何をしていますの?」

身を守るような姿勢から、セラフィは聞いてきた。
一応聞いては来ているが、目は何を言っても信じないという確固たる意思を宿していた。

「えーと。その、見物?」

「この変態っ!」

ですよねー。
でもね?あれなんですよ?
見物としか言いようがないんだからしょうがないじゃないか!
実際見物しかしてないんだし!

「いや、違うんだ。いや違うんです」

「何が違うと言いますの?!女子がいる第二体育館の用具室に潜んでおきながら!」

「いや、そうなんだけど!そうなんですけど!これにはな深い訳があるんだって」

「わけですの?」

「あぁそうだ」

俺はセラフィに、ここには霧咲によって連れてこられたこと。第二体育館にいる女の子たちが居なくなってからここを出ようとしたこと。でもセラフィが来たことによって今この状況に陥ってしまった事などを話した。

「信じられませんわ」

「まぁだよな」

俺の話を最後まで聞いていたセラフィは話を聞き終わるとそう言った。

まぁ、そうだろう普通は。
俺だって逆の立場だったら信じねーもん。
だってボールを片づけよと用具室を開けたら野郎が一人入るんだぜ?どこの薄い本のストーリだよ。

「霧咲さんがいえ、女の子が男性を誘ってここに連れてくるなど……」

「まぁ……だよな」

セラフィもそこはおかしいと思ってくれたか。
普通はそうだよな?女の子の方から男子を誘ってこんなところに連れてくるなんてありえないよな?

「でもこの前の様子を見る限りは……」

「この前?」

「いえ。何でもありませんわ」

「そうか」

目をそらして話を断ち切るセラフィ。
この前というのは、せラフィが友人部の部室に来た時のことなんだろう。
この様子を見るとあまり深く聞くのは良くないな。
あの時も部室の雰囲気悪くなったもんな。

「その……」

数秒の沈黙の後。セラフィが口を開いた。

「ん?」

「あの時は……その……ごめんなさい…ですわ」

「へ?」

「だから、あの時ですわ!あの時!わたくしが貴方方の部室に赴いて不適切な発言をしたことですわ」

「あー」

まさか、セラフィからあの時のことを話すとは思わなかったな。

「いや、気にすんなよ。確かに男女比とかおかしいからな。あの部室は」

「許してくれますの?」

「んー。許すも何も俺にはそんな権限ないって。思ったことを言っただけなんだろ?だったらセラフィは悪くないって」

「ありがとう……ですわ」

「ただ、アニメなんかって言われたのはちょっとって思った」

「それは……!」

「まぁそれも今は気にしてないから」

こればかりはしょうがない。
偏見とかあるもんな未だにアニメってやつは。
俺だって違うジャンルのものには偏見とか持っちゃうからな。

「あの、アニメに関しては本当にごめんなさいですわ。あの後帰ってみて色々調べたのですけど、わたくしがあさはかだったのだと思い知らされましたわわ」

「あさはかなり」

「え?なんですの?」

「いやなんでもない」

……通じねーか。

さてと、宴もたけなわではあるがそろそろ退出するとしますか。
これ以上俺とセラフィの貴重な昼休みを削るわけにはいかないもんな。

「じゃ俺はこれで」

しれっと立ち上がり、しれっと帰ろうとした瞬間。

「どこに行こうとしますの?」

セラフィに呼び止められた。

「なぜ?」

そして、更に追求される。

「なぜっていやそりゃ」

「現在進行系で犯罪を犯していますのに?」

「…………」

おふ。

やっぱダメだったかー。
覚えてたかー。話題も変わってたからイケル!と思ってたんだが、そうは問屋が下ろさないかー。

「待ってくれ。俺は犯罪は犯してないぞでありますよたぶん」

「日本人のくせに日本語がおかしいですわよ?ようた」

「……っ!」

くそっ!まさか外国人に日本語を指摘されるとは!
何も言い返せない自分が悔しいぜ!

「それにあれはやっぱり嘘でしたわね」

「あれ?」

「生身の女の子に、3次元の女の子に興味がないと言うことですわ!」

そういった瞬間。
セラフィは自分の身体を守るような姿勢になり、俺から何もされまいと千年の盾みたいに鉄壁なガードを固めた。
昔は千年の盾強かったのになー。ブラック○ジシャンとか、ブラックマジシャンガ○ルとか強くてかっこよくて可愛くて嫁にしてーとか思ってたなー。

よし、現実逃避はここまでにして。
もう一度きちんと状況を整理しようとしよう。

まず、場所は主に女の子が使用する第二体育館。
それも用具室という非常に人に見つかりづらい場所。
次に時間。今は昼休みで、第二体育館は第一体育館に比べて使われる頻度が少ない。というか使う奴自体が居ない。つまり人に見つからない。

そして、今現在。
ヤローと金髪縦ロールの3次元美少女がその見つからない時間も場所に2人きりで、なおかつ3次元美少女の方はヤローに怯えている(推定)。

……ふぅ。

……ここまでか。

「どうして天を仰いでいますの?」

「あ?だってもうこれつんでんじゃん」

「ツンデレ?」

「ちげーよ。よく知ってんなその言葉」

あぁ1度でいいからツンデレキャラにツンデレやってもらいたかったなー。
安形さんちのさーやさんにでも会いたかったー。

「この状況誰がどう見てもアウトだろ。俺の人生はここまでだよ」

誰にもまだ見られてないにしても、ここで誰かに見られたらアウト。
そうじゃなくてもセラフィ自身がありのままの状況を伝えてしまえばアウト。
俺はここまでだ。
ごめん二次元美少女おまえら。俺はどうやらここまでみたいだ。

「諦めたらそこで終了ですのよ?」

「そこは試合終了って言って欲しかったな」

ちょくちょく何か入れてくるけどセラフィってほんとにアニメとか見てないのか?
まぁでもセリフは有名だもんな。スラダン。

「つか、なに?お前は俺に諦めて欲しくないの?」

この状況から抜け出せと?
誰にも見られぬままセラフィの記憶も消して何も無かったことにしろと?
残念だな。俺は記憶消去とかエ○ドオブアースとか覚えてねーんだよ。

「い、いえ!それはそれでわたくしの身体が危険になってしまいますので」

セラフィの身体が危険になる?
病気かなんか持ってのか?

まぁ、なんにせよ。残りの余生を楽しもう。
スマホに入ってるアニメを見ながら安らかに俺は逝くぜ。

「…………」

「ん?」

「何もしませんの?」

「するも何もスマホ持ってねーからな」

「す、スマホって脅す材料に写真を撮る気なんですの!?」

「は?写真?なんで?」

アニメを見るのに写真を撮るとか俺はしないんですけど。

「え?あのじゃあスマートフォンは何に使いますの?」

「何ってアニメ見るために決まってるだろ?」

「え?アニメ?」

なんだ?なんかさっきからセラフィの様子がおかしきがする。
さっきからセラフィの様子がちょっとおかしいんだが。

これはあれだな。早くここから居なくなりたいってことなんだろ。

「あぁ言える立場じゃないと思うが行っていぞ?」

「え?行っていい?どこにですの?」

「職員室なり、先生のとこなり、警察なり、先生のところにだよ」

出来れば先生以外のところに行ってくれるとありがたい。

「あの……ようた?」

「ん?」

「わたくしに何もしませんの?」 

「するって何を?」

「その、えと、破廉恥なことを」

「は?なんで?」

なんて俺がセラフィにそんなことをしなきゃいけないんだ?why?

「え、だってようたは生身の女の子に興味が」

「だから言ってるだろ?ないって」

「えと、じゃあわたくしに興味は」

「さらさらない」

いいから早く先生のとこ以外に行ってくれねーかなー。
死ぬんなら早く死にたい。この待ち時間が苦しすぎる。

「それは……それで……しますね」

「へ?」

「それはそれでイラッとしますわね!」

「へ?」

「なんなんですの!?わたくしなんですのよ!?このわたくしなんですよ!?誰も居ない空間でわたくしと2人きりなんですのよ!?どうして何もしませんの!?自慢じゃないですけど胸だってそこそこあると自負していますのよ!?それに胸以外もなかなかに発育していて程よい身体付きになってますのよ!?それなのに!それなのに!あなたは!」

「お、落ち着けセラフィ。深呼吸だ深呼吸」

何か知らんけどセラフィが怒り狂ってるんですど!

「そこそこ覚悟を決めていたというのに…!それなのにさらさら興味がない!?このわたくしに!?」

ためだ!俺の言葉がまるで通じていない。
オ○ムのように怒り狂ってる!
どうすりゃいい?!

「わたくしのプライドは著しく傷つきましたわ」

この言葉を最後にセラフィはようやく落ち着きを取り戻した。
良かった。でもなんかプライドがどうのこうのって。

「瀬尾ようた!」

「は、はい!」

「今週末にわたくしとデートをしますわよ!」



…………え?





「あれ?柏木さん?」

「お前は確か瀬尾の」

「関智和。陽向と同じクラスで友達」

「どうしてここに?」

「あー。色々あって戻りが遅い陽向を探しに来たとこ。そう言う柏木さんは?」

「しっ。少し黙って」

『今週末わたくしとデートをしますわよ!』

「……ほう」

「柏木さん?今なにか企んだよね?」

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