終わった世界の復讐者 ―僕はゾンビを操ってクラスメイト達に復讐する―

触手マスター佐堂@美少女

第7話 生存者の正体


 女の生存者を見つけたトバリは、思案していた。

 とりあえず、女がどの程度の状態なのかを確かめるのが先決だ。

 あの部屋の中に食料はまだ残っているのか。
 衛生状態はどの程度のものなのか。
 ……この狂った世界で、まだ正気を保てているのか。

 正直、生存者が一人いたところで、あまり進んで助ける気にはならないというのがトバリの本音だった。
 とはいえ、いまだにパンデミックの概要くらいしか知らないトバリにとって、この地獄の中を生き延びてきた人間というのは、それだけで貴重な存在だ。
 病人や狂人ならともかく、まだ健康で落ち着いて話ができる人間であれば、少しぐらい助けてやるのもやぶさかではない。

「……っ!?」

 しかし、悠長に考えていたせいで、それ・・に反応するのが遅れた。

 ゾンビたちが、女の声に反応するような危険な挙動を見せたのだ。
 彼らはふらふらとレジの方へと歩き、女が立てこもっている部屋を目指し始めた。

「――動くな」

 トバリがそう呟くと、ゾンビたちの動きがピタリと止まった。
 どうやら、小声でもトバリの認識範囲内ならば命令は有効らしい。

 まとめサイトの記述では、ゾンビは視覚と聴覚を頼りに獲物を認識しているということだった。
 ここで、ゾンビは人間の声に敏感なのだと再確認できただけでも収穫だ。

 トバリがゾンビたちを止めたのは、中にいる女性にゾンビの存在を認識させないためだ。
 ゾンビたちを静かに外に逃がせば、コンビニの中には最初からゾンビはいなかった、ということにすることもできる。
 つまり、女と接触する状況の選択肢をかなり増やせるのだ。

「……さて、どうしようか」

 できれば、トバリは他の人間に、ゾンビを操る力があることを知られたくない。
 こんなモラルも何もない世界でそんなことを知られたら、どうなるかわかったものではないからだ。
 トバリの能力は、ゾンビ相手にはほぼ無敵と言っても過言ではないが、人間だけしかいない所ではなんの役にも立たない。

「お前ら。静かに外に出て、他のゾンビがここに入ってこれないようにしといて」

 トバリがそう言うと、ゾンビたちはコンビニから出ていった。
 どうやら、うまくいったようだ。
 他のゾンビがここに入って来られないように、というのは少し厳しいかもしれないが、とりあえずこれで店内からゾンビはいなくなった。

「……あまり大きな声を出さないでもらえませんか? ゾンビたちが近づいてきたらどうするつもりなんです?」

 トバリはドアのほうへと近づき、できるだけ抑えた声で向こうにいる女性に話しかける。

「あっ……ご、ごめんなさい」

 女性は少し落ち着いたのか、声が小さくなった。

「とりあえず、ドアを開けてもらっても?」
「……もう、そこにゾンビはいないんですよね?」
「このコンビニにはいませんよ」

 女はそれでもしばらく渋っているようだったが、やがてドアを開けて、トバリを中に招き入れた。

「うっ……」

 部屋の中から、なんとも言えない悪臭が漂ってくる。
 まあ、無理もない。
 こんな狭い空間では満足に排泄物の処理もできず、身体も洗えなかっただろう。

 部屋の中は殺風景だった。
 無骨な机と椅子、それに業務用のロッカーが置いてあるだけの、簡素な部屋だ。
 もっとも、モノはそこらじゅうに散らかっていたが。

「――って、夜月!?」
「……ん? あれ?」

 トバリは、少女の顔をまじまじと見つめる。
 よく見ると、その顔はトバリにとって見覚えのあるものだった。

「……もしかして、葛城かつらぎか?」



 少女は、トバリのクラスメイトの一人だった。




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