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夢での決闘 その⑨

 蒼井明は、どこまで話を聞いていたのだろうか?
 強打したはずの胸辺りを気にしている様子で立ち上がる。

 「どうして殺さなかったのですか?」

 また嘲笑いを浮かべている。
 明らかな挑発。
 僕と晴人の会話を聞いていなかったのか?
 それとも、聞いたうえで、続けているのか?

 「お前、殺されるのが目的なんだろ」

 僕は動機を突きつける。
 僕の発言に対する蒼井明の反応。
 やはり、さっきの会話を聞いていなかったのか、蒼井明の表情が変わる。
 一瞬、驚きを見せ、ひきった表情に変わる。
 それが正解だと僕らへ告げる。

  僕は「さて」と前置きに一言つぶやいた。
 「僕らは勘違いをしていた。一体、どうして、そんな勘違いをしていたのだろうか?今となって原因がわからないが―――
 僕たちは蒼井明。君が死ぬ事で、この夢と同化している結界が消滅すると思い込んでいたんだ」

 「思い込んでいた?」と僕の発言に反応したのは晴人だけだった。
 蒼井明は、まるで苦虫を噛み潰したような顔で何も言わない。

 「そう、思い込んでいたんだ。晴人、お前はモンスターの中で絶滅した種類があると聞いた事があるかい?」
 急に話を晴人へと振ったが、晴人は少し考えてから
 「いや、そんな話は聞いた事がない」と答える。

 「その通りだ。僕の知る限り絶滅したモンスターの種類、種族を聞いた事がない。そもそもモンスターは一定数の数が自動に出現するんだ」
 僕は断言する。 
 もしかしたら、僕らが知らないだけで、なんらかの理由で絶命したモンスターがいるかもしれないが・・・・・・。
 だが―――
 「僕は実際に試している。近所の山という限られたフィールド内ではあるがオークを全滅させようと奮闘した時期があったんだよ。駄目だったけどね・・・・・・」
 無駄だった。駄目だった。それでも―――
 一瞬、あの光景がフラッシュバックする。
 いや、今は関係がない事だと、頭の隅へと追い込んだ。

 「僕は現実をゲームに例えるのが嫌いだけれども、ゲームで言うところの無限湧きってやつさ。モンスターは絶滅させる事ができない。
 だから僕はこう考えた。蒼井明というモンスターを倒したところ、本当にこの世界は、この夢は、この結界は―――
 本当に消滅するのかと・・・・・」


 「そう、僕は逆の考えに到達したんだ。むしろ、逆で、ここが、この場所が蒼井明というモンスターの出現ポイントとして固定されてしまうのではないか・・・・・・。そう考えたんだ」

 つまり、この場所で蒼井明を殺してしまうと
 殺してしまう事で不死身の存在に成ってしまうのではないか。
 そういう結論に到達した。

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