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夢での決闘 その⑥

 僕は2人が倒れた場所へ向かって歩き出す。
 体がふらつく。歩き出しの一歩目すらうまくいかない。
 ショートソードを具現化させ杖替わりにしてバランスを取る。
 何とか、まっすぐ進もうとするが―――
 こけた。ずっこけた。
 危なく、自分のショートソードで僕に切り込みが入っていた所だった。
 剣呑、剣呑・・・・・・
 何だろう?この妙な緩みは?
 戦いの最中でありながら、油断しきっている。
 いや、違うのか。もう戦いの最中ではないのか。
 晴人の様子を確認する。
 動きはない。まるで死んでいるかのように動きはない。
 至近距離での爆破の衝撃で失神しているようだ。
 とりあえず、生きているみたいだ。
 一方、蒼井明の様子―――
 自分が作り出した閃光弾によるダメージは晴人より少ないみたいだ。
 だが、体を貫かれたダメージは決定打に見える。 
 体を蠢かせ、かろうじて意識を保っているのがわかる。
 もしかしたら、それは、体の痛みが意識を覚醒させているのかもしれない。
 意識を失い、昏睡している晴人。
 覚醒して、動いている蒼井明。

 しかし、その状況に対して決着はあまりにも真逆だった。
 嗚呼、自分の心のゆるみ。その原因に気がつく。
 決着。その終着は、事前予想に反して苦戦したというものでは、あったが―――
  事前予想通りの結果。

 蒼井明、最後の一撃で平常心を欠く事になり、気がつかなかっただけで
 もうすでに戦いは決着を迎えていた。
 後は、蒼井明の命を絶てば、この空間は消滅し、僕と晴人は夢から目覚める。
 そう、命を絶てば―――

 「俺が代わろうか?」と声がする。
 声の主は晴人だった。 いつの間にか、意識を取り戻していたらしい。
 爆音による耳への衝撃が原因なのか、普段としゃべり方に微妙な差異を感じられる。
 それに、近距離から受けた閃光弾のダメージはぬけてないらしく、いまだ仰向けのまま、目も開いていない。
 「どう見ても代われる様子じゃないだろ、それ」
 僕は、思わず苦笑した。
 晴人は
 「そうだな。じゃ、俺の分も上乗せで頼むわ
 もしも、お前が人殺しに業みたいなものを感じてるなら、大体俺の責任でええで?」
 そう言った。

 ・・・・・・。
 少し考えながら「感じてねーし」とワザと軽く答える。
 ひどい会話だ。 
 死の目前にこんな会話を聞かされている張本人は何て思っているのだろうか?
 僕は蒼井明の方へ一歩近づく。

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