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夢での決闘 その③

 晴人は戦いに集中している。
 蒼井明の一挙手一投足を見逃さまいと構えている。
 少なくとも僕の目には、そう映っている。
 だが、その内面までは計り知れない。
 彼は、戦いに身を置きながらも、普段と変わらず、どこか飄々としたスタイルを崩さなずに戦い続けてきた。
 それは、今も変わっていないはずなのだが・・・・・・
 何か、嫌な予感がする。いや、予感ではなく不安を感じている?
 あの蒼井明の言葉。晴人が人を殺した事があるという意味。
 それが僕の思考を縛り上げ、捕えて離さない。
 頭を振るい、強引に思考は外へはじき出す。
 不思議と戦いに動きはない。それは不自然なほどに。
 まさか、すでに蒼井明は戦闘不能になっているのではないか?
 そんな考えも脳裏へ浮かんでいる。もしかしたら、そういった心のゆるみを誘っているのでないか?
 いや、考えて答えが出るわけがない。
 僕がやるべき事は気を緩めない事。
 不動心―――

 集中力。
 僕は落ち着きを取り戻す。
 蒼井明の動向を探ろうと立ち上がる煙に意識を向ける。
 モクモクと立ち上る煙に変化は見られない。
 いや、違う。
 僅かな揺らぎ。極小な変化。
 それは煙の中で人間の体一つ分が消滅した結果、煙の流れが内側へと微小の変化が起こったのだ。
 それはもちろん、後から思い出し考え出した答えであり
 この瞬間は、ほぼ直観と言ってもいい、判断で状況を理解する。
 蒼井明が煙の中から消えた。
 瞬間移動。 どこへ? 背後への―――
 だれ? 僕の背後ではない。 当然、晴人の背後だ。

 晴人の背後が揺らめく。晴人は正面を見ながらも背中に黒炎を蠢かしていた。
 僕が無言で背後への対策を行ったとの同じで、晴人もまた対策を取っていた。
 背後に蒼井明が現れた瞬間、晴人の黒い炎が複数の槍へ変化し、生物のように蒼井明を襲う。
 放たれた黒槍は8つ。左右上下に斜めを加え、全方向同時攻撃。
 逃げ場は・・・・・・ 
 ない。

 一瞬で蒼井明は串刺しにされる。そして、そのまま空中に持ち上げられる。
 吐血。蒼井明の口から赤い液体が漏れる。
 内臓へのダメージが見て取れる。
 しかし、蒼井明は、刺されながらも動き続けている。
 あの瞬間でも晴人は致命傷になる部分を縫って攻撃したのか。
 もう、これで蒼井明は戦闘不能。決着と言っていいのかもしれない。

 だが、その判断は甘かったと言わざる得なかった。 
  

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