スキルゲ

チョーカー

自白 その③

 『どうやったら人間がモンスターになれるのか?』

 晴人から発せられた質問。
 その質問に対して、蒼井明の反応は
 「え?まだ分かっていなかったんですか?」
 と驚きの表情だった。
 どこをどう見ても演技には見えず、本心からの驚いているように見える。

 「おかしいな。必要なヒントを出したつもりなんですが、賢志さんもわかってないんですか?」
 僕は素直にわからないと答えた。
 わからない。 ヒントがあったのか?
 僕は、頭を回転させる。
 かつて、門田愛という少女がいた。
 その子はモンスターを強制的にレベルを上げさせ、人間に近づけさせるという実験によって誕生した。
 その逆の方向性なのか? 人間をレベルダウンさせて、モンスター化させる。
 ―――いや、どうやって? その方法が思いつかない。
 それにレベルの上下で人間性が変わってしまう、なんて話は聞いたことがない。

 「本当にわからない・・・・・・みたいですね。仕方がない。答え合わせと行きましょう」
 蒼井明は「さて」と話を続ける。
 「僕らの世界には数多くのモンスターが存在しています。その中で奇妙なモンスターがいませんか?例えば、レベルが低いのに恐れられているモンスターとか?」

 レベルが低いのに恐れられているモンスター?
 それはすぐに連想された。
 それこそ、門田愛と始めて出会った時に戦っていたモンスター。
 ゾンビだ。

 「どうやら、この連想ゲームは2人ともクリアできたみたいですね。そう正解です。この世界で最も奇妙な性質を持つモンスター『ゾンビ』です。低レベルモンスターでありながら、一撃必殺を保有しており、どんな強靭な人間でも、噛まれてしまうとゾンビの仲間入りです」

 それは説明を聞くまでもない。ある種、この世界の常識とすら言っても良い程の知識であるが―――
 それが、どう関係するというのだろうか?

 「まだ、わかりませんか?常識を疑わないと真実にたどり着けない」
 一度は言ってみたかったセリフです。
 そう彼はおどけてみせる。

 それを晴人が「お前は説明がクドい。続けろや」と一蹴すると、肩をすくめるポーズを見せ、話しを再開させる。

 「そもそも、みんな勘違いしていたんですよ。ゾンビに噛まれると死んでゾンビになる。その認識が間違いだったのです」

 唖然とした。
 晴人を見ると、彼も奇妙な表情を浮かべている。
 たぶん、僕も同じ表情をしているのだろう。

 その常識、その前提が崩れてしまうと―――


 

 

 

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