スキルゲ

チョーカー

自己紹介

 ここは夢の世界。正確には僕の夢の中。
 嗚呼、ピエロが弱体化していく理由がわかった。
 この世界は僕の脳が見せている架空の世界。
 だからだ。だから、僕がこの世界を夢だと認識すればするほど―――
 僕以外の人間は、異物として希薄な存在へと変わっていくのだ。
 しかし、それは、目の前にいる晴人にも当てはまっている。
 今日、ここで決着をつけないと、手遅れになりかねない。
 だから―――

 空間が歪む。この世界を作っている僕には、そこに人間がいる事がわかる。
 この世界にいる人間。僕と晴人以外には奴しかいない。
 一瞬、空間にノイズが生じ、そいつは姿を現した。
 空間にノイズ?いや、違った。
 そいつは、ピエロの姿を維持ができなくなっている。
 かつて、北川幸二として現れた時と同じ姿が、ピエロの姿と重なってブレている。
 やがて、その姿すら維持できななったか、新たな姿を見せた。
 始めて目にする、その姿。 体の線は細く、頼りげのない黒髪の少年。
 おそらく、僕や晴人よりも年下なのだろう。
 「・・・・・・」
 「・・・・・・」
 「・・・・・・」
 僕ら3人は何も喋らない。近すぎず、遠すぎず、互いに間合いを探り合う。
 三者三様、自分が有利な間合いを見つけ、ほぼ同時に動きを止める。
 そして、沈黙。
 後は何らかのきっかけがあれば戦闘が始まる。
 膨張した風船のように、何か少しのきっかけで・・・・・・
 動きが起きる。目の前の少年が片手を上げたのだ。
 意を外された。隙をつかれたと言ってもいい。
 本来なら、戦闘の合図になってもおかしくない行為であったが、絶妙なタイミングで、絶妙な速度で、それを回避したのだ。
 僕は、一歩だけ後ろへ下がり、間合いを外す。
 それを見て「油断するなよ」と晴人は僕に向かって呟く。

 「コイツはいきなり、俺の目の前で自分の腹をかっさばいて見せたんや。しかも、俺の姿に変身してな」

 それに対して少年は「すいませんでした」と頭を下げた。
 この状態で、素直に頭を下げて謝罪をする。
 それが、余計に不気味さを演出させる。

 「僕は、僕の本名は蒼井明です。正直に言ってしまうと僕には、この状態から逃げ出す事はできません。だから、最後に答えれる事は答えますよ」

 少年、蒼井明。
 北川幸二の影武者であり、夢の中では狂ったピエロを演じていた。
 その少年が本来の姿を現し、自ら名を名乗る。
 どこか、奇妙な感じだ。いや、それよりも・・・・・・
 あの日、あの時、密室の中で何が行われたのか?
 そして、その目的は、なんだったのか?
 それを教えると彼は言っているのだ。

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