スキルゲ

チョーカー

最後の夢へ

 いとも簡単に亀裂が入って行く地面。
 車多さんは亀裂に向かって、もう一撃。拳を振るう。
 さらに広がる亀裂。その下にある空間が肉眼でも確認できる。
 部屋がある。無骨な部屋だ。 
 打ちっぱなしのコンクリート。僅かに聞こえてくるのは空調の音。
 いや、冷蔵庫の音も混じっている。
 生活に最低限必要な物しか存在していない。
 あとはベットだけ・・・・・・。そのベットの上に誰かが横たわっている。 
 それに気がついた僕は、誰よりも先に部屋の中へ飛び降りた。
 ベットに近づき、その人物を確認する。
 間違いなく、彼は滝川晴人。彼は目を閉じて、眠りに落ちていた。

 「おそらく、あのピエロは滝川くんの肉体を乗っ取り、ここに潜んでいたのだろうね」
 車多さんの声が上から聞こえてくる。
 「・・・・・・。一体、これは何なんでしょうね」僕は呟く。
 今まで、いろいろな推測はあったものの、その目的がわからなかった。
 いわゆる動機というやつだ。
 わけが分からない。ここまで、大掛かりな・・・・・・。

 「それは本人に聞けばいい」
 「・・・・・・」
 「おそらく、あのピエロは人々に認識される事で弱体化している」
 「・・・・・・」
 「そして、この場所に辿りついた。後は本人に聞けばいい」
 その車多さんの言葉。それは、おそらく正しい。
 ここが辿りつける終着地点。次に行う事は答え合わせのみ。
 「さて、どうする?」
 車多さんは訪ねてくる。 
 もう、直ぐにでも行うべきか?最終決戦というやつを―――
 そして、選択する。


 僕は来た。夢の世界。
 もはや、世界が変わった事が肌で感じられるようになっている。
 場所は、さっきまでと同じ地下。 ただ、砕けた地面はそこにはなくなっていた。
 艶子さんはいない。
 車多さんはいない。
 佐々木さんも・・・・・・いない。
 立っているのは僕だけだ。僕、1人のみ。
 いや、違う。僕、1人ではない
 コツコツと背後から、わざとらしく足音を立てて近づいてくる。

 「やぁ」と僕は振り返らずに言う。
 「おう」と彼は横に並んで答える。
  彼を見ると片腕を上げている。
 僕も片腕を上げ、クロスするように軽くぶつける。
 それだけでいい。
 今は、どれだけでいい。

 
 

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