スキルゲ

チョーカー

悪夢の道化師 ③

 本当に倒せないのか・・・・・・。
 体力フィジカルよりも先に精神メンタルが壊れてしまいそうだ。
 終わりない夢。それが悪夢。
 僕はその意味を知る。
 恐怖からの鬼ごっこ。一定の感覚で聞こえてくる笑い声。
 自分の体を汚染していく狂気。 
 もう早く狂ってしまいたい。おかしくなってしまいたい。
 正気を保てる自分が難い。
 嗚呼、なんだ。僕はもう狂ってしまっていたのだ・・・・・・。
 逃げるのを諦めた僕に対して、ピエロは軽い足取りで歩いてくる。
 もしかしたら、このピエロは僕自身なのかもしれない。
 そりゃ、殺せないはずだ。そう結論づけると笑いがもれていく。

 「アッハハハハ・・・・・・」
 それに同調してピエロも笑い声を合わせてくる。
 「アッハハハハ・・・・・・」
 2つの笑い声が見事なユニゾンを奏でていく。
 もう・・・・・・早く
 ・・・・・・1つになりたい。


 「目覚まさんかい!ボケがっ!」

 言葉と共に赤い線が目に入る。
 その後の衝撃で弾き飛ばされ、殴られたという事に気づく。
 顔面を・・・・・・

 「ぶべぇ」と若干変形した僕の頬から奇妙な音が漏れた。
 夢ではない確かな痛み。いや、夢どころか昏睡しそうなんですが・・・・・・
 立ち上がろうとすると足元がふらつく。
 さっきの拳擊が脳を揺さぶっているのだろう。
 だから、今見ている光景が、ダメージを受けた脳が見せている幻覚ではないだろうか?
 そんな非現実的な光景であった。

 赤い髪。
 黒い服に黒い羽。
 そして死神のような大鎌を武器に―――

 彼はいた。
 確かに、そこに存在していた。
 死んだはずの彼は死者などと見間違う事もなく、僕の目の前に立っていた。

 滝川晴人がそこにいた。

 「おい賢志や。何を呆けてんねん」
 「お、おう・・・・・・ってお前死んだはずじゃ?」
 「はぁ?そんな話になってんのかい!?」

 晴人からの言葉で、彼が生存していた事を頭が理解する。
 ジワっと目頭が熱くなってくるが、それよりも聞きたい事が山ほどある。
 だがそれよりも先にやるべき事がある。

 「取り敢えず、倒すぞ。あのピエロ」
 「せやな。話は倒した後にするか。あのピエロを」

 「ヒッハッ 邂逅の包容は終わったのかい?でもね、あんまりピエロを甘く甘く舐めてると大やけどだよよん アッハハハハハ」


 

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