悪夢の道化師　②

　スキルを使っての全力逃走。
　それこそ、ピエロが馬鹿にしていた脱兎の如く。
　しかし、移動スキルの効果が終了と共にピエロは目前に現れてナイフを振るう。
　それをショートソードで受けて、加速スキルを利用したカウンター。
　渾身の一撃が決まる。
　しかし、ピエロの腹部を一断ちしても手応えが残らず、ピエロは笑い声を上げている。
　この攻防を何度繰り返したがろうか？いくら攻撃してもダメージが通らない。
　倒す方法が見つからない。
　どこかに弱点はあるのではないか？何か特殊な攻撃でないとダメージが入らないのではないか？
　トライアル&エラーを繰り返しているが見当もつかない。
　もしかすると、僕が保有しているスキルではダメージを与えられない・・・・・・のかもしれない。
　では、どうすればいい？
　自力で結界から脱出できない。
　誰か、他のスキル使いが結界内に入って戦ってくれれば勝機が掴めるかもしれない。
　しかし、スキル使いの巣窟と言ってもいいはずの本陣で誰も結界内にいないという事は・・・・・・。

　スレスレにナイフが通過して思考が急停止する。

　「あれれれのれ？もう逃げないのかい？子うさぎちゃん。丁度いいや。僕は子うさぎのリゾットって食べてみたかったんだアッハハアハハハのハハハ」

　「黙ってろ」とピエロの口に向けてショートソードをねじ込む。
　やはり手応えは・・・・・・あるッ！？。
　瞬間、それが罠だと気がつく。
　ピエロの口を貫いたショートソードが抜けない。
　そのまま、ピエロは空いた両腕で僕の体をガッシリと掴む。
　まるで昆虫にで捕食されるかのような絶望感。
　ショートソードが刺さっているピエロの口が広がっていく。
　『子うさぎのリゾット』
　本当に食うつもりだったのか？僕を？

　「それではでは、私の血肉になってくれる食事に感謝を捧げまして、いただきますよ」

　いや、まだあった。
　両腕が捕縛されても使えるスキルが―――
　僕の両腕が金属へと変化していく。腕がグロテスクな翼へと変わっていく。
　それと同時に翼がピエロの腕を貫く。
　翼を作っている金属。それらは全て剣であり武器だ。
　そのまま、広げた複数の剣をピエロの口へ―――――

　口内へと発射させた。
　確かな手応え。剣は僕の意思に従ってピエロの体をズタズタのボロ雑巾へと変形させていく。

　「勝った」そう確信を得えた言葉がもれる。
　だが、次の瞬間にはピエロの姿が消えていた。
　あっけに取られた僕の背後に何かの気配は感じらる。
　僕は振り向くまでもなく、ソイツの正体に気づいている。