スキルゲ

チョーカー

推理 ③

 話し合いは熱中していた。いつの間にか、随分と時間が経過していた。
 沢村さんは2本目のタバコを取り出し火をつける。

 「今まで出た考えを整理していくか」

 僕は頷いた。
 晴人が殺害されていた部屋には戦闘の痕跡がなかった。
 いや、強いて言えば晴人の血痕があっただけだ。
 本当に、あの部屋で戦闘が行われていたのだろうか?
 そして、晴人と戦闘を行った人物は、晴人は一撃で殺害に及ぶ事が可能なほど戦闘能力に優れていたのだろうか?

 晴人は別の部屋へ強制的に追いやった北川幸二の影武者には、そこまで卓越した戦闘能力があったとは思えない。
 あの時、影武者は僕と晴人の2人を相手に戦っていた。
 それは、あくまで足止め、時間稼ぎが目的だった。だからと言って影武者の戦闘能力が北川幸二本人より上という事はないだろう。
 あの影武者の戦闘能力は本人の物ではなく、スキルの効果によるものだと思う。
 北川幸二本人のスキルは、特殊なスキル構成であった。それを影武者を演じるためだけに同じスキルを獲得するのは効率が悪すぎる。いや、同じスキルを獲得できる人間を影武者に選べば・・・・・・
 それでも容姿の問題が出てくるか。
 あの影武者のスキルは、影武者として別人になるものだと考えるのが自然だ。
 そうすると・・・・・・。
 やはり、晴人を殺したのは別の人間の仕業か。それとも晴人の死自体が偽造だったのか。
 もちろん、僕は後者の方を考えていきたい。僕は、晴人が生きていると主張するためにやっているのだ。

 「とりあえず、考えるべき所は、部屋が不自然だった事。晴人殺害の犯人が誰だったのか?という所か?」
 その沢村さんの発言に
 「僕は晴人が殺害されたとは考えていません」と一瞬、ムッとして答える。
  そんな様子の僕を沢村さんは、大きな声で笑い飛ばすのであった。

 「この件は俺の方でも調べといてやるよ。無料でな」
 「協力していただいてありがとうございます」

 沢村さんに忙しいのだろう。
 また、日を改めて続きを論議する事になった。
 礼を述べて帰ろうとする僕に・・・・・・

 「晴人の墓を見ては帰らないのか?」

 沢村さんの提案に首を横に振った。
 晴人の墓は、本陣の地下に作られている。
 モンスターに殺されたり、表立って死を公表できない者達の墓。
 要するに無縁仏のような物なのだろう。
 でも、僕は・・・・・・  

 
  

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