スキルゲ

チョーカー

足音の悪夢

 今日も最悪の朝を迎える。気持ち悪い夢を見た。
 ベットから体を起こしても動く気力が沸くまで時間が必要みたいだ。
 思い出そうとするだけで吐き気を催すほどのスプラッターホラー系悪夢だ。
 僕は寝る前に発動していた仮面を手に取る。
 この仮面で記憶の保存を試してみたが、実際に記録されているかどうか・・・・・・。
 今、確認するのは、さすがに無理だ。たぶん、吐く。

 夢の中の僕は、道を歩いていた。
 最初は、歩いていただけ。どこが目的地なのかも分からず、ただただ歩き続けていた。
 そしたら、誰かが追いかけてくる気配がしてきた。
 振り向いて、誰だかを確認したいという気持ちはあるんだけれども、振り向いてはいけない。
 なぜか、なぜだかわからないけれども、振り向いてはいけないという事を漠然にわかってしまったんだ。
 だんだん、気配は近づいてくる。だんだん・・・・・・
 もう、背後に来ている。手を伸ばせば届く範囲の距離まで近づいてきている。
 そして、僕は、ダメだと分かりながら振り向いてしまったんだ。
 僕の背後に何がいたのか?振り向くと、何もいなかった。
 キレイさっぱりと背後のモノは消え去っていたのだ。
 僕は、少しだけガッカリした気持ちで歩きなおすんだ。
 でも、暫く歩いていると気がつく。
 背後には誰もいない。けれども「カッツカッツ」と足音だけが背後から近づいてくる。
 振り返っても誰もいない。でも「カッツカッツ」と足音だけは近づいてくる。
 自然と僕は歩を速めていく。道は一本道。背後の何かに追いつかれると悪い事が起きてしまう。
 僕は一本道を走り抜けようとする。
 でも、舗装されていた道は、どんどん荒れていき、走りづらくなっていく。
 それでも走り続けていると、今度は左右の塀が狭くなっていく。
 ついには、体を横にして行かないと進めないほどの幅になってしまった。
 もう、背後には「カッツカッツ」と足音が迫ってきていて―――

 といった所で場面転換が起こる。
 気がつくと人通りの多い道に立っていた。
 どうやら、狭い道を抜けたみたいだ。 もう、あの足音も聞こえ―――

 「カッツカッツカッツカッツカッツ・・・・・・」

 え?一体、どこから聞こえてくるんだ?
 そして、音が鳴る場所がわかった。
 僕のお腹の中から聞こえてきているんだ。
 そして、その足音は、僕のお腹から外に向かって出て行った。

 悪夢の内容を思いだし、僕は吐き気に耐えるのが精一杯だった。

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