スキルゲ

チョーカー

決着

 完全なる包囲網。
 もう北川幸二に逃げ場はない。

 「もう決着だ」

 僕の言葉に対して反応が薄い。
 もしかしたら、もう諦めているのかもしれない。
 だが、その考えは違った。

 「決着か。決着ね? それで君たちは私をどうするつもりだい?この場で処刑と称して殺すか?できるはずがない。なぜなら私は悪いことをしていないのだから」

 『私は悪いことをしていない』
 北川幸二が上げている大義名分。
 自分達の物が奪われたから、奪い返そうとしうただけ。
 それを崩さない限り、彼は死ぬまで同じことをしかけてくる。
 何度も何度も、繰り返してくるだろう。
 だから僕は・・・・・・

 「僕は決着とつけると言ったんだ」

 僕は一歩前に出て高らかに主張する。

 「立てよ北川幸二。正々堂々と1対1の戦いで、何の憂いも残させない。お前に決定的な敗北心だけを心に刻みつけてやる」

 そう決闘だ。かつて、西田健一と行った決闘。
 なぜ彼と決闘に及んだのか?
 仮面をつけた僕にはわかる。再認識する。
 人間が持つ主義主張を言葉だけでは壊すのは難しい。
 だから、歯向かう心に叩き込むのだ。刻み付けるのだ。
 自分はコイツにかなわないと・・・・・・
 だから、僕はやる。
 ねじ曲がった心をさらに絞り上げ、引きちぎって、叩き割ってやる。

 ゆっくりと立ち上がった北川幸二。
 顔はうなだれているが、僅かに見える目は、死んだ魚の目のようで生気が感じられない。
 口は少し笑っている。
 いや、徐々に大きな笑みに変化して、ついには笑い声が届いてきた。

 「結局、お前等は暴力で人間の意思を変えようとする。やはり、私は悪くなかった」

 北川幸二が言い終えると、轟音が鳴り響く。
 彼の体から閃光と衝撃が放出されていく。
 自爆? いや、違う。
 ステータス耐性のある僕は騙されない。
 こいつ、この期に及んで逃げる気だ。
 本格的な衝撃波が襲いかかってくる。 
 だが、逃げしてたまるか。加速スキルを使い衝撃波の壁を突き破る。
 そして、北川幸二がいた場所へ手を伸ばす。
 だが、僕の手は空を掴むばかりだった。

 「畜生がああああああああああああああああああああ!?」

 全ては終わった。地面には大きな穴。
 地下の地下。穴の中には空洞が広がっていた。
 確かに彼の爆破スキルが強力だったが、戦いの最中、彼の最大の爆破攻撃では地面や壁は破壊できなかった。
 彼の爆破スキルというよりは、脱出用にあらかじめ仕掛けていたのだろう。

 全身が脱力していく。疲労からではなく、心の緩み。
 いま、攻撃されたら、為すすべもない。
 でも、それでもいい。
 僕は艶子さんと、そしてエルの方へ顔を向けて微笑んだ。

 
 

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