スキルゲ

チョーカー

世界への執着心

 体感時間で2時間くらい経過しただろうか?
 僕はまだ、夢に閉じ込まれたままだった。
 夢の中とは言え、体の感覚は存在している。やはり、スキルの影響で通常の夢とは、別物なのかもしれない。戦いによる疲労が体を支配している。僕は、この広い空間で大の字になって仮眠をとっていた。
 夢の中で惰眠を貪るのは、初めての経験だ。
 少し疲労の回復が早いのは、二重に寝ているためか? それとも、気のせいか?
 意識レベルの低下中、この空間で僕以外にいる存在、西田健一のゆるキャラが語りかけてきた。

 「1つだけ聞いてもいいか?」
 「ん?さっき言っていたトークってやつか?」

 僕は目を開き、体を起こす。
 普段の僕なら無視して眠り続けてる所だが、西田健一の問掛けは、どこか真摯的な雰囲気があった。

 「これは素朴な疑問なのだが、あの天使。君がエルと呼んでいるあの子。なぜ、君は執着しているんだい?」
 「執着?なぜって言われても・・・・・・」

 質問の意味がわからなかった。
 彼女を守り、助ける事。
 ソレは既に当たり前の事になっていて、当たり前と認識している事を改めて説明するのは難しい。
 これを言葉にして答えるのなら、やっぱり「それが当たり前になっているから」と言う以外になかった。
 僕の返答を西田健一は、どう受け止めたのか?彼の表情に変化はなく読み取れない。
 そんな彼が発した次の言葉は予想外のものだった。

 「君は自分自身はもちろん、この世界にすら執着を持っていない」
 「執着を持っていない?この僕が?」

 自分に? 世界に?

 「そうだ。私のオリジナルである西田健一との戦い。あの時に君は、この世界が偽物でも、自分自身が偽物でも、同じ事だと。そう言ったのだよ」

 確かにそんな話をした記憶がある。
 しかし、それは・・・・・・
 しかし、それは・・・・・・
 しかし、それは・・・・・・続く言葉が出てこない。

 「自分や世界に執着が持てないはずの君が、なぜあの子に執着しているんだい?」

 僕は考える。僕は、本当に世界に、自分に執着を持てないでいるのか?
 いや、それよりも・・・・・・

 「たぶん、僕は羨ましかったのだろう。オリジナルのお前と門田愛との関係が羨ましかった」

 僕の答えに彼は呆けた顔を見せた。 それこそ、あの時の問答で見せた表情と同じような顔だった。
 やがて、その顔は泣きそうな顔へ変化して

 「嗚呼、それすらも私の影響か」

 そう呟いた。
 

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