スキルゲ

チョーカー

第二の人格

 
 「えっと、念の為に確認しておくけれども」
 「なんだ?」
 「お前って本物の西田健一なのか?」
 「・・・・・・」

 返答は無言。無言という事は肯定を意味しているのだろう。
 だが、しかし・・・・・・
 どうやら、このゆるキャラは西田健一本人というわけではないようだ。
 しばらく、沈黙が続く。彼は、自身をどう説明すべきか迷っているようにも見えた。

 「私は西田健一本人ではなく、仮面のスキルに残された情報を元に君の脳が再現した西田健一。そう思ってくれれば間違いはない」

 やはりというべきだろうか?
 西田健一から伝承スキルとして送られた仮面。
 彼が生前に行った実験のデータが収まっているらしい。
 僕は、この情報を使うつもりはなく、一度も仮面スキルを使用しなかった。

 「お前はスキルの情報を元に再現されたと言ったが、僕は仮面のスキルを使った事はない。なのになぜ、お前みたいなのが存在しているんだ?」
 「情報。つまりは他人の膨大な記憶そのものを、別の人間にいれた結果、西田健一本人ですら予想外の不具合が生じたのだ。その前兆は君も感じていただろう」

 前兆は、確かに前兆はあった。
 自分の性格、キャラとは違う言動。それに加え記憶障害。
 最初は僅かな違和感から始まり、ついには親友たる滝川晴人すら忘却の彼方へ追いやった。
 それもこれも、結局は西田健一が原因なのかよ。

 「本当なら、君に気づかれないまま、君の第二の人格として人生を謳歌するつもりだったのだがな」
 「・・・・・・おい!」

 そうか、僕の脳が作り出したという事は、コイツは僕の別人格と言う事になってしまうのか。
 二重人格で第二の人格がゆるキャラってなんだ?そりゃ? 冗談にもならないぞ。

 「まぁ、主人格である君に悟られない限りは、私も自由だったのだが・・・・・・。君が私の存在に気づいた時点で、人格として私の自由度は減少する。やがて消えていなくなるだろう」
 「そうか・・・・・・。気の毒に思うが、僕としては安心したよ」
 「気の毒になんて思わなくても結構だ。誰だって、自分の頭に他人がいたら気持ち悪いだろうさ。ところで・・・・・・」

 「今の君は、絶賛敗北中なのだが、そんなに暢気でいいものなのかい?」

 忘れていた。僕は戦闘中に失神したのだ。

 「おい、どうやったら目が覚めるんだ?教えろよ」
 「落ち着きたまえよ。これは君の脳が見せてる幻覚みたいなもんだぜ?そう自由に寝たり、覚めたりできるものか。落ち着いてトークしようぜ。トーク!」

 少しだけ、トークの部分にイラッとした。

  

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