スキルゲ

チョーカー

再臨

 
「あれ?」

 気がつくと見知らぬ部屋にいた。
 白色に統一されていて、ただ立っているだけで不安を感じる。
 部屋? いや、違う。部屋ではない。
 最初は白一色で覆われているために距離感が狂ってだけだと思った。
 よく目を凝らすと、それは間違いだった。
 ただ、空間が広がっているだけだ。
 壁といった仕切が存在していない。どこまでも広がっている空間が、そこにはあった。
 馬鹿な、と僕はつぶやく。
 地平線すら見えてもおかしくない空間、それを内蔵した建造物があるはずがない。
 僕は頭を捻る。
 すぐに思いつく可能性としては2つ。
 何らかのスキルの使用によって閉じ込められた状態。
 もう1つは、戦いに負け、失神した僕が見ている夢。
 他の可能性・・・・・・今は思いつかないか。
 しかし、夢だとしたら自由に思考できるなぁ。
 これが明晰夢ってやつか。

 「いいや、違うな。両方ともが正解だ」

 不意に声がした。聞いたことのある声だ。
 だが、その人物は既に死んでいるはずだった。
 間違いなく、僕がこの手で葬った人物だ。
 僕は声の方向に目をやり、怒声を上げる。

 「西田健一!血迷って地獄から迷い出てきたか!?」

 声がした場所。そこにいたのは予想通りの仮面をつけた人物・・・・・・
 人物? いや、人物か?これ?
 それは奇妙な物体だった。
 可愛らしくデフォルメされた仮面。
 3頭身の体。必要以上に手足は短く、バランスが悪そうだ。
 そこにいた人物の正体。それは、ゆるキャラだった。
 ゆるキャラだ。ゆるキャラがそこにいた。
 これがキモ可愛いってやつなのだろう。

 「・・・・・・」
 「・・・・・・」
 「ブッ・・・・・・ アハハハハハハハハハハハハ!?ゆるキャラってお前、アハハハハハ!腹が痛てぇよ」

 思わず、堪えきれず笑いが吹き出して止まらず、その場でのたうち回る。
 笑い転げるというのはこういうことなのだろう。涙が止まらず、前が見えない。
 うまく呼吸もできず、苦しい。
 やはり、これは夢だったのだろう。
 コイツは・・・・・・
 とんだ悪夢ってやつだぜ。

 体感時間にして数分後。
 何とか、ゆるキャラ化した西田健一を正面から見ても耐えられるほどの免疫がついた。
 とりあえず夢なんだから、意味もなく殴ってもいいだろうと考えた時、西田健一は喋り始めた。

 「最初に言った通りに、これは夢であり、スキルの影響によるものだ。そう、私が君に与えた仮面のスキルによって起こっている現象なのだよ」

 一瞬、目の前の物体が喋っている意味がわからなかった。
 所詮は夢だから理解しなくても構わないと考えるが、何か直感めいたものが否定する。
 よくわからない。よくわからないが、目の前のゆるキャラの口調は西田健一と同じものだった。
 

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