スキルゲ

チョーカー

焼き増しの戦闘

 加速スキルの欠点は、人間の反射神経を超えたスピードを行うため、急な動作の変更、スキルのキャンセルが効かないところにある。
 そのために相手のカウンターに脆く、使いどきを見極める必要があった。
 しかし、新たな両翼のスキルには硬度が伴っていた。
 翼を前に体を覆うようにすれば、よほど火力の高い攻撃でなければ防ぎきれる。
 僕は2つのスキルを同時に使い前に出る。 加速中、弾幕のように張られた爆弾が襲いかかってくるが、両翼を破壊するには及ばない。
 すぐに攻撃の間合いに入る。 だが、北川幸二は足元に爆弾を設置していた。
 いくら、翼が硬いと言っても、体を包んでいる状態では攻撃できない。
 これを予想して、攻撃まで加速スキルを想定させず止めてある。
 2人の間合いは攻撃圏内で止まっている。
 そして、爆発。
 翼で受ける僕に対して、北川幸二は生身で爆破の衝撃を受けて吹き飛んでいく。
 さっきと全く同じ展開。まるで焼き増しした再現された光景。
 逃げるためとは言え、自らダメージを受けていく。ジリ貧というレベルではない。
 いや、違うか。
 立ち上がろうとしている北川幸二の姿を確認する。
 衣服もボロボロで所々に血が滲んでいる。どう見てもダメージはデカイ。
 しかし、その動作に違和感。
 見た目ほどダメージを受けてないのか?ごく自然に普通に立ち上がっている。
 なるほど、なるほど、そういうことか。
 いくらダメージを受けたところで、離れた場所にいるエルから回復スキルを受けているから戦い続けれるわけだ。
 殺されない限り、動き続けると言う主張をしているのだ。
 反吐が出る。虫唾が走る。自身の中にある黒い感情がざわめいている。
  いや、落ち着け。挑発だ。
 こちらがいくらダメージを与えても回復するのと同じで、あちらも僕にダメージを与えられない。
 だから、僕の感情を揺さぶっているのだ。
 僕が暴走した所に一撃を与えようとしている。
 だから落ち着け。
 僕は深呼吸を繰り返し、高まった心臓の鼓動をクールダウンさせる。
 新鮮な空気を取り入れ、脳が活性化していく。
 ん?何か、また違和感?
 しかし、その違和感の正体を考える間もなく、北川幸二が攻撃を開始しようとしている。
 離れた位置から大量の爆弾を錬成。 さっきの攻防で使われた弾幕の2倍、いや3倍ほどか?
 僕は加速スキルを発動させる。
 いくら爆弾の数が増えようとも、その全てが直撃するわけではない。
 僕に向かって発射された爆弾。それらに意識を集中。
 回避運動を展開させる。
 当たらなければどうということもない。

 

 

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