スキルゲ

チョーカー

醜悪な両翼

 爆破で巻き起こった煙幕。それが僕の姿を隠す。
 発動させたスキルによって爆風、熱風、衝撃を防御した。
 そして煙は晴れた。新スキルを発動させた僕の姿。
 僕には羽が生えていた。
 それを見た北川幸二の反応は

 「なんとグロテスクな・・・・・・」

 エルの天使の羽。晴人の黒炎の羽。
 それらと違い、無骨な金属の羽。
 背中に生えているのではなく、両腕と一体化している。
 確かに生身の腕が金属と一体化している見た目は、グロテスクと言ってもいい。
 北川幸二は『天使を敬う会』の教祖をやってるだけあって、羽に思う所があるのかもしれない。
 思い返せば、『天使を敬う会』の看板の上に羽を模したシンボル的なイラストがあった気がする。
 しかし、まぁ・・・・・・
 そんな思考中にも北川幸二は攻撃の準備を開始している。
 周囲に球体状の爆弾を、いくつも具現化。
 そして、複数の爆弾を、こちらに向けて発射させた。
 僕は、落ち着いて羽を構成している金属の一本一本に神経を通していく。
 この羽は空を飛ぶためのものではない。
 当たり前だ。飛行スキルの上位スキルが、空を飛ぶためのものであるはずがない。  
 僕は羽と呼んでいる。だが、羽の形状をしているだけであって、羽の機能を持ち合わしていない。
 ならば、この羽の正体は何か?
 これは武器だ。実は武器系スキル。カテゴリーは大剣に分類されている。
 この両翼は、腕の延長のように精密な動作が可能だ。
 飛来してくる爆弾を1つ1つ丁寧に破壊していく。
 そして、爆弾はワンテンポ遅れて爆発する。
 複数の爆弾が誘爆していく。その威力は凄まじいものだ。
 僕は羽で身を包んで、爆破の衝撃を防御した。
 なるほど、防御系スキル使いの気持ちが少しだけ分かる。
 本物の防御系スキルほどの硬度はないが、それなり防御力が備わっている。
 爆破をやり過ごし、前へ出る。
 距離を縮めると両手・・・・・・いや、両翼を広げる。
 羽を形状させている金属。それらを鋭い刀のように変化させ、複数の刃を突き立てる。
 だが、その攻撃は空を切る。
 北川幸二は、後方へ飛ぶと同時に、自分が立っていた場所に爆弾を残していた。
 爆弾の爆破により、僕の追撃を防ぐと同時に間合いを広げてみせた。
 無茶をする。そりゃ串刺しになるよりはマシとは言え、至近距離での爆発。ノーダメージとはいかない。
 しかし、その行動により、この戦いが見えた。
 近距離ならば、僕が有利。
 それに対して北川幸二は、距離をキープして遠距離攻撃で戦いたいのだ。
 晴人の防御スキルは破壊した拳。おそらく、スキル破壊の効果もあるのだろうが、まさか刃物である僕の両翼を殴るわけにはいかないのだろう。
 だが、僕には加速スキルがある。スキルを複合して使う事には慣れていないとは言え、一瞬で距離を縮められる。
 正直に言うと、この時点で勝ちを意識してた。

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