スキルゲ

チョーカー

ランニング

 奈落の底へと飛び込んだ僕ら。
 着地と同時にトラップが発動して死にかけていた。
 そのトラップは落とし穴プラス竹槍という原始的でありながら、効果的なトラップ。
 もしも、晴人の防御スキルである黒炎が守ってくれなければ、串刺しの刑になっていた。
 せっかく、取得した飛行スキルも反射的に使用するほど使い慣れていない。
 やれやれとため息を1つ。落とし穴から抜け出し、走り出そうとする僕を晴人が止めた。

 「ちょい待ち。こう薄暗い地下で罠ありきや。俺の黒炎の防御スキルが効かない罠も考えられる」
 「そんな事を言いだしたら、いつまでたっても追いつけないぞ。向こうだってなりふり構わない全力疾走で逃げてるんだろうし」
 「せやから、こうする」

 晴人の手に黒炎が塊が現れる。それがどんどんと増殖していく。

 「コイツを先行させて罠を回避できるで。安心しいや。人間が走るのよりは確実に速いで」

 言うとすぐに黒炎の塊が飛んで先行して行く。

 「ほんで、北川幸二を発見したら、そのまま弾丸へと変化する寸法や」
 「そんなスキル、いつの間に習得したんだ?確か、探査系スキルはモンスター相手限定しか持ってなかったはずだけど?」
 「俺も反省くらいはするし、必要性を感じたスキルは習得する主義や」

 なるほど。
 しかし、ただの探査系スキルじゃなく、攻撃に転換できるのは攻撃的な晴人らしいスキルだ。

 奈落の底。
 僕の移動スキルが使えれば、もっと早く追いつけるのだろうが、地下は迷路と言っていいほど、入り組んでいて罠も大量に仕掛けられていた。
 黒炎の先行のおかげで無効化できているとは言え、安易に移動スキルを使うことはできない。
 僕ら2人は疾走する。
 しかし、今だに北川幸二の後ろ姿に追いつかない。
 僕らとどのくらい離れた距離にいるのか、考えるのも臆劫だ。


 どのくらい走っただろうか?呼吸は切れ切れになり、汗が吹き出してくる。
 本当にどのくらい走ったのかをしみじみ考えてしまう。
 『天使を敬う会』の建物。その地下としては、明らかに広すぎる距離を走り抜け、いままでと違う広い空間に出た。
 そこに北川幸二は待ち伏せていた。
 壁に寄りかかり、僕ら同様に息を切らせて顔色は悪い。
 なにか、喋っているようだが聞き取りづらい。
 一方、僕らはランニングの疲労から、その場に座り込んでいた。

   
  

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