スキルゲ

チョーカー

攻城戦

 『天使を敬う会』
 堂々と掲げられた看板。そして、場所は駅前の一等地。
 あまりにも目立っていた。
 建物自体は、通常のビルディングではある。
 あるが・・・・・・
 ギリシャ宮殿のような柱。それには天使の彫刻が施されている。
 悪趣味な建物だ。
 駅前という立地条件で人通りは大変多い。
 そんな場所であるからこそ、僕らは自然ととけ込めているのだ。 
 通行人も、「今日は普段より人が多いなぁ」くらいにしか認識していない。

 最初に『天使を敬う会』の敷地に入っていったのは、藤川艶子、佐々木良嗣、車多香の代表3人。
 ごく自然に自動ドアを通り、敵地へと入って行く。
 代表自らが先陣を切るのは、あくまで対話を希望しているという建前を成立させるため。
 そして、彼らこそが、本陣において最強だという自負ゆえ。
 その後、僅か数秒の時間差をまって、第二陣が投入される。
 ビルを囲っている集団の輪がゆっくりと小さくなっていく。


 『天使を敬う会』内部。
 予想通りの戦闘状態。攻城戦になる。
 狭い廊下で伏兵の如く、物陰に隠れて襲ってくる雑兵。
 そのほとんどがスキルを持たない普通の人間。そのために全力で叩き潰すような真似はできない。
 できるだけ、怪我すらさせずに戦闘不能状態で放置していく。
 だが、そんな相手に混じってスキル使いが鋭い攻撃をしかけてくる。
 やりづらいことこの上ない。
 人数で言うなら、こちら側の半分に満たない人数が建物内にいると事前情報がある。
 それに加え、こちら側は全てがスキル使い。
 数の上では負ける要素はないはずなのだが・・・・・・
 古来より籠城とは、負けるための戦術ではなく、勝つための戦術だ。
 外からの援軍を待つ時間稼ぎだったり、相手へ攻めるベストなタイミングを見計らう戦術。
 勝機がないのであれば、彼らは迎え撃ってこず、この場所を破棄すればいいだけの話。
 何か勝機があるからこそ、この場所を死守しているのではないか?
 そんな僕の予感とは裏腹に、順調に進んでいく。
 そして、建物内で最も広い部屋。『天使を敬う会』の中核といえる場所までたどりついた。

 部屋の左右には阿吽の金剛力士像のように巨大な天使の彫刻が置かれている。
 ここまで来ると天使を敬っているのではなく「馬鹿にしてますよね?」って聞きたくなるほどだ。
 そして部屋の奥に5段くらいの階段があり、少し高い位置に豪華な椅子が備え付けられている。
 その椅子に座っている人間が1人。
 腰まで伸びた青髪に黒いマント。現実離れした出で立ちは忘れたくても忘れられない。
 北川幸二が威風堂々と存在していたのだった。
 

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