スキルゲ

チョーカー

本陣出陣

 本陣には多くの人が集まっていた。
 その目的は単純に『天使を敬う会』に向かい、代表の北川幸二との対話。
 平和的に言うと、これが本日の予定。
 しかし、本陣に集まっている人数が過去最大級だと言ってもいい。
 そして、その人数のほぼ全てが平和的な対話が行われると思っていない。
 おそらく行われるのは武力衝突。そのために集められるだけ、かき集められた兵隊なのだ。
 既に士気は高まっている。

 藤川艶子 佐々木良嗣 車多香

 代表三名がいつの間にか、集団の中心へ現れていた。
 彼らは、鼓舞せず、激励せず、奮起させようともしない。
 ただ静かに、外へと歩みをすすめる。それに合わせ、集団も動いていく。
 それが見事に統率された集団であらんと言わんばかりに・・・・・・

 もしも大量の武装集団が、外を、公道を練り歩いていたらどうなるか?
 おそらく、僅か数分で警察に包囲されるであろう。
 しかし、僕の風貌はどうだろう?
 言うならば普通だ。中学生くらい少年もいれば、仕事の途中に抜けてきているようなサラリーマン風の男性。ギャルメイクにナチュラルメイク。森ガール系もいれば、頭を盛っている盛ヘアの女性もいる。
 僕らを傍から見たらどう映るのか?  
 共通点が見いだないだろう。普通に人ごみに紛れれば、集団として認識されないのだ。
 いや、むしろ僕たちは既に人ごみなんだ。

 「そう言えば、人ごみって表現的にどうなんだろ?」
 「なんや?急に?」

 隣にいた晴人は反応してきた。

 「人ごみのごみってなんだ?」
 「いや、なんだって言われても、ゴミ屑のゴミとはちゃうで、人が混むから人ごみなんやで」

 へぇ?そうなんだ?と晴人の意外な知識に関心した。

 「なんや?妙にリラックスしてるみたいやな。いい傾向やな。なんかあったんか?」
 「そうだな。大幅にレベルも上がった事だし、いろいろ試してみたくてワクワクしてるんだ」

 嘘だ。本当は、現実感の欠如が始まっているんだ。
 なんだか、全てが作り物に見えてくる。

 人も、道も、空も
 偽物?なのだろうか? 

 嗚呼、現実感の欠如? 
 違う。消えていこうとしてるのは、現実感なんてものじゃなくて、僕自身だ。
 ただただ、消えゆく自分を周囲に気づかせないようにしているだけで・・・・・・
 一体、僕の身に何が起こっているんだ?

 

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