スキルゲ

チョーカー

勝利の余韻

 僕は大の字に寝転んだアキラの方へ走って向かう。
 アキラは自分の攻撃で空いた天井の穴を眺めていた。

 「なんて言うか、死ぬギリギリまで自分を追い込まないと、自分が生きてるって実感がわかなくなっているんだよ」

 アキラは上半身を起こし、近寄った僕に言う。

 「スキルに目覚めたばかりの時はなりふり構わず、生きるのに必死になって、毎日泣いていた。それから徐々に力がついてくると戦うの楽しくなってきたんだ。強くなって、そして、強くなり過ぎた。もうボスを相手にするしか、自分の存在を認識できなくなったんだ。戦闘中毒ってやつさ」

 僕はなんて答えればいいのかわからなくて沈黙する。
 そんな僕の様子を見て、アキラは少し笑う。

 「君をね。ボス狩りを見せたのは、僕と違う人種だと思ったからなのさ」

 思わず「え?」と呟きが漏れた。

 「僕とは違って、普通でありながら強くなり続けられる。この世界に求められているのは、そういう人間だ。君なら、それになれる可能性があるんじゃないかな。まぁ、僕のカンだけどね」

 彼は、少し恥ずかしそうで、はにかんだ表情を見せた。
 そんな彼に、何とか気持ちを言葉にして伝えたいのだが、うまく言葉にできなくて、できなくて。

 「がんばるよ」

 平凡とすら言えない言葉しか出てこなかった。 
 でも、その時のアキラの表情は、本当に嬉しそうだった。


 「ところで賢志くん。あんまり近寄って欲しくはないんだけれども・・・・・・」
 「え?」
 いきなり言われても、何のことだかわからなく、目を白黒させる。

 「いや、流石に服がボロボロなのは恥ずかしいと言うか、僕も女の子のわけで・・・・・・」
 「・・・・・・」

 彼は何を言っているのだろうか? 女の子?誰が? 
 ここには、僕とアキラしかいない。
 僕が女性という叙述トリックの可能性は0ではない。
 しかし、僕が女性ではないと言う事を僕は知っている。
 さて、では、誰が女性なのだろうか?
 消去法で考えると、女性である可能性があるのは、アキラと言う事になってしまうが、果たして真相は?

 いや、いや。落ち着け。
 確かにアキラの体を見ると、スラッとした長い手足に加え、若干、女性らしい丸みがボロボロになった衣服から見え隠れしている。言われて意識すると、なんだか急にエロスを感じはじめてしまって・・・・・・

 「だから、そんなに見ないでくれよ」

 アキラの声に、僕は慌てて、回れ右をして「ご、ごめん」と謝った。
 そんな僕をどう思ったのだろうか? 広い洞窟にアキラの大きな笑い声が響いた。

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