スキルゲ

チョーカー

VSオーク

 さらに一歩、一歩と時間をかけ、ゆっくりと近づいていく。
 やがてシルエットだけだったオークの姿が明らかになっていった。
 正直にいうとオークは醜い。
 皮膚が緑色の人間をリアルに想像してほしい。
 それだけで、嫌悪感を抱く人は少なくないだろう。
 それに加え、彼ら顔は豚・・・・・・ いや、野生の猪に似ている。
 見間違うことなく怪物。

 この場所は彼らの住処なのだろうか? 
 自然に草木が生い茂る中、3匹のオーク周囲には、まるで自然のエアポケットのように空間が広がっている。
 おかげで、僕が月の光で彼らの姿を目視できるのに対して、彼らから僕を見ることはできないだろう。
 おそらく、物音を立てなければ、彼らは僕の存在に気がつかない。
 息を殺し、ひっそりとタイミングを伺う。
 シュー シューと彼らの口から呼吸音が聞こえる。
 それに混じって異臭。
 何度、臭っても慣れない臭いだ。 その臭の正体は彼らが襲い、食した人間の死臭なのだから。
 気を抜けば、吐瀉物を撒き散らしかねないほどの嫌悪感。
 静かに怒りが湧いてくる。
 しかし、その一方で冷静な声で問いかけてくる僕がいる。

 『生きるために人間を喰らう彼らと、生きるために彼らを殺す僕。一体、どこに違いがあるというのだろうね?』

 うるさい、だまれ。

 『僕が救おうとしているエル。彼女の彼らと同じ人を喰らう存在だとわかっているんだろ?』

 黙れ、黙れよ・・・・・・。

 『殺すなら早く殺すがいい。彼らを、エルを、そして僕を』

 消えろ!?

 ガサガサと草木を揺らす音が漏れた。
 迂闊だった。こんな周囲を草木で囲まれた場所で普段と同じようにショートソードを具現化させたのだ。
 現れたソードは具現化した瞬間に草木を揺らし、音を立てた。
 オーク達は一同にこちらへ視線を向ける。
 やるしかない。
 決断すると同時に行動へ出る。軌道のイメージを固めて加速スキルを発動。
 加速した僕は、オーク達の頭部を飛び越えて行く。
 狙う着地ポイントはオーク達の背後にそびえ立つ大木だ。
 そのまま、大木を蹴って軌道修正。
 3匹のオークの内、1匹。そいつが振り向くよりも速く・・・・・・
 背中にソードを突き立てた。
 十分に加速した僕の一撃は、本来の人間が繰り出す突きよりも遥かに強力だ。
 分厚い筋肉で覆われたオークの背中を簡単に貫く。
 そのまま、倒れたオークは体が崩れ消滅していく。
 まずは1匹。 
 再び加速スキルを発動。
 また別の大木へ向かい、蹴りで方向転換。
 空手でいう三角飛びのような状態でオークを翻弄させる。
 高速移動によって、オークの攻撃を許さない。
 触れさせない。触られない。
 それでは、まだ甘い。
 もっと速く。彼らに認識することすら許さないスピードで・・・・・・

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