スキルゲ

チョーカー

佐々木さんの肉体 その2

 たしかに戦闘において筋肉は必要だ。
 批判を覚悟で言う。
 敢えて言おう!
 ボディビルダーの肉体は実戦的ではない。
 誰もが一度くらいは聞いたことがあるはずだ『ボディビルダーの筋肉は見せかけ』と。

 現代科学において、その原因はトレーニング方法にあるといわれている。
 ボディビルダーのトレーニング方法として一般的なのは高重量トレーニング。
 その名前の通り、重い器具を使うトレーニング方法。
 トレーニング器具で自分の扱えるギリギリの重量を数回だけ使用する方法。
 これが筋肥大を起こすのに効率的なのだ。

 しかし、これがいけない。
 例えばボールを投げる時、どこの筋肉を使うだろうか?
 ほとんどの人は腕と答えるだろう。
 しかし、野球の投手は腕の力だけでボールを投げているだろうか?
 答えはNOだ。 腕だけではない。体の各部を連動させ、剛速球を投げるのだ。 
 人間が、より強く、より速く、動くために必要なのは筋肉の連動。
 勢いや体の反動を利用した動き。それこそが身体能力を高めるのだ。
 それに対して、ボディビルダーのトレーニングは、その反動や勢いを殺して行う。
 腕を鍛えるなら、腕だけの力で。脚を鍛えるなら、脚の力で。
 なぜなら、それが筋肉を鍛えるのに効率的だからだ。
 これをとんでもなく筋肉に負荷がかかる状態で行う。

 つまり、ボディビルダーの身体能力低いと言われる原因は、全ての筋肉を連動させる動作が苦手だからなのだ。

 いかんいかんと頭を振る。
 佐々木さんの肉体に見蕩れて、つい理論展開してしまっていた。
 しかし、頭をフル活用したのが良かったのだろう。
 気分の悪さが吹き飛んでいた。
 念のため、再び顔を洗い、軽く顔を叩く。
 鏡に映る顔は、多少なりにマトモな顔に戻っていた。

 「もう、大丈夫です。戻りましょうか」

 佐々木さんと共に部屋へ戻っていった。
 僕だけならともかく佐々木さんが抜けたためか、室内は休憩モードになっていた。
 みんなに心配をかけた事を謝る。
 逆に体調の事を気にかけられ、席に座るように勧められた。
 なんだか、申し訳なくなってくる。
 どうやら、会議は中断ではなく終了していたようだ。
 退室してから、思っていた以上に時間が経過していたことに驚く。
 北川幸二の本拠地の場所は判明している。
 信者達は、『天使館』と呼んでいるらしい。嫌な名前だ。
 意外だったのは、現時点で本陣の方針は報復ではないということだった。
 目的は接触と交渉。そして、それを行う日時は3日後に決まっていた。

 

「スキルゲ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く