スキルゲ

チョーカー

違和感の謎

 部屋の中は、予想に反してぴりっとした空気。
 艶子さんの他には、佐々木良嗣さん、車多香さんと本陣の代表者が集まっていた。
 挨拶もおざなりに資料が渡される。
 どうやら、昨日の襲撃者からの証言をまとめた物らしい。
 簡単に斜め読みしてみたが、その時点で頭が痛くなってきた。
 思わず、頭を押さえてしゃがみ込みたくなる衝動に駆られた。

 「えっと、つまり、北川幸二が行ってる行為って宗教団体なんですね」

 僕の発言に頷く三者。
 『天使を敬う会』
 それが、襲撃者達の所属している団体らしい。
 そして、信者を集う方法にエルを利用しているらしい。
 確かに、普通の人間がエルを見たら、本物の天使以外に思えないだろう。
 なるほど。それで一般人による天使の目撃証言が噂になっていたのか。
 要するにエルを、わざと目立つように飛ばせていたというわけだ。
 信者を集めるため、まるで宣伝目的に浮かべる風船のアドバルーンのように飛ばしていたというわけだ。

 なるほど。
 なるほど、なるほど。

 ブチ切れそうだ。

 体温が急上昇していく。それに合わすように、ふつふつと怒りがこみ上げていく。
 僕らはついている。こんなにも早く、相手の本拠地がわかったのだから・・・・・・
 代表者三人がここで話し合いをしている。
 それはつまり、報復の話。
 つまりは復讐。
 自分が震えている事に気がつく。武者震い?そうではない。
 嗚呼、僕は歓喜に震えているのだ。

 不意に手を引かれ正気に戻った。
 手を引いていたのは晴人。

 「え?なに?」

 自分自身が出した霞んだ声に驚いた。
 喉が渇いて、僅かながらにも痛みを感じる。

 「自分、鏡を見てみ。今にも死にそうな顔しとるで」

 どうやら、相当に酷い顔をしてるようだ。
 僕は、断りをいれて部屋から退出させてもらいトイレへと駆け込んだ。
 トイレの鏡に映る顔は、まるで別人のようだった。
 その顔を見ていると何か違和感が浮かんでくる。
 なんだろうか?誰かに似ているように思う。
 思い起こせば、違和感にとらわれる事が多くなっている。
 性格と言うか、僕のキャラとでも言えばいいのか、何か、こうブレてる感じがしている。
 昨日も襲撃者相手の大立ち回りの最中に女性を本気で殴っていた。
 戦闘とは言え、戦いとは言え、殺し合いとは言え・・・・・・
 僕ってそんな奴だったか?
 それを認識した時、凄まじい吐き気が襲う。
 同時に殴られたような頭痛。

 あまりの痛さにうずくまるも、頭痛は一瞬。
 あの痛みは嘘のように引いていった。
 顔を上げる。再び鏡に映る自身を見つめると、誰に似ているのかわかってきた。

 西田健一に似ている。

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