スキルゲ

チョーカー

まどろみの羞恥

 予想外なのは、本陣の宿泊施設。
 ちょっとした高級ホテルのスイートルームも斯くやあらんと言わんばかりの豪華さだった。
 専門のルームキーパーでも雇っているいるのか?ここ?
 キングサイズのベットに大の字に寝っ転がると、凄まじい睡魔が襲ってきた。
 まぶたが重い。
 北川幸二に会って、エルと出会って、本陣襲撃があって、また北川幸二と戦って・・・・・・
 信じられないけど、今日1日の出来事なんだよね。
 気が緩むと疲労感が溢れてくる。目を閉じ、そのまま意識が失われていく。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 誰だ? 今、ドアをノックしたように思ったが?
 気のせいだったのだろうか?
 まどろみの意識の中、再び夢の世界へといざなわれていく。
 だが、僕は強引に意識を覚醒させる。
 何者かが、部屋の中まで入ってきたのだ。
 おかしい。
 晴人なら、飄々と入ってきてもおかしくはない。
 エルなら、ばたばたと音を立てて入ってくるかもしれない。
 だが、妙だ。 この部屋に鍵をかけていたはずだ。
 鍵のかかった部屋に誰が入ってこれるというのだろうか?
 ベットの中、僕は息を潜ませる。 
 静まり返った室内。やたらと自分の呼吸音がうるさく感じる。
 耳をすませば足音が僅かながら聞こえる。
 広い室内、足音だけでもおよその距離は把握できる。
 一歩、二歩、三歩。間合いは5メートルとない。
 僕は、ベットから跳ね起きると同時にスキル発動準備を済ませた。
 虚空からショートソードが具現化される前に侵入者の正体に気がついた。
 スキル解除。
 侵入者は艶子さんだったのだ。彼女は何も喋らない。

 「えっと、どうかしたの?」

 そう言ってから、自分の格好に気づく。
 半裸状態でベットから跳ね上がっていたのだ。 そりゃ、艶子さんもフリーズして当然だ。

 「ちょ、ちょっと待ってて、すぐに着替えるから!?」

 脱ぎ散らかしたズボンを手に取り、急いで履く。
 慌て過ぎたためにバランスを崩して艶子さんの方向に倒れそうになる。
 偶然に女性を押し倒す形になるシーン。
 フィクションなら許せれても、実際に起きたらシャレじゃすまないだろう。
 耐える。耐える。耐える。手に汗握る土俵ぎわ状態。
 例え倒れる事になっても、強引に体を捻ってでも・・・・・・
 僕の強い意思に肉体は呼応する。ギリギリの体勢で耐えきる事に成功した。
 普段、風呂上がりで行っている体幹トレーニングの成果が発揮された瞬間だった。
 そんな僕を艶子さんは目を背けず、終始ガン見しているのだが気にしないようにしよう。
 そうしないと、僕の心が痛む。

「スキルゲ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く