スキルゲ

チョーカー

襲撃者達

 走る。
 走る。
   走る。
 通路を駆け抜けていく。移動スキルを使い加速していく。
 狭い通路、人に衝突しないように細心の注意とスキルの微調整を繰り返す。
 気がつくと1分に満たない時間で、額に汗が浮かんでいる。
 だが、気にしてる場合ではない。
 前方には戦闘を開始している集団がいるからだ。
 事前情報通り、相手には女性が多いようだ。 
 今の季節にあわず、全員が白いコートのようなモノを羽織っている。
 流石に女性を痛めつけるのは、心が痛む。
 だが、あいにくと僕は拘束系のスキルを持っていない。
 僕はスキルを解除すると、そのスピードを維持したまま地面を滑る。
 狙いは、一番近くで戦闘に集中している女性。
 低い状態のままスライディングで近づき、足を払う。
 女性は体が浮かび、そのまま地面に倒れる。
 僕は立ち上がり、倒れた女性に対して拳を構える。
 空手で言う下段突き。狙いは腹部。
 一瞬、時が止まったかのような静寂さが僕を包み、拳を走らせる。

 人体を叩いたとは思えない打撃音。
 その音に周囲の戦闘が制止する。
 聞こえるのは腹を殴られた女性のうめき声だけ。
 漫画みたいに腹部を殴られて失神することは、ほとんどない。
 あるのは地獄の苦しみだけだ。

 「僕は、女性でも手加減なんてしない。死にたいやつから一歩前に出てこい」

 威圧。
 本当はハッタリ。
 だが、このハッタリで敵の戦意をそぎ落とすことができ、制圧まで時間はかからなかった。 
 しかし、この場所に北川幸二はいなかった。
 戦力を分散して、別の場所で戦っているのか? 
 せめて、戦況くらいは聞いて飛び出すべきだったのだが、そんな余裕はなかったのだから仕方ない。
 僕は、次の戦場を探して足を走らせる。
 すると直ぐ、次の集団が見えてくる。
 一体、どのくらいの人間が投入されているんだ?

 相手はナイフを手に襲いかかっていく。
 僕はショートソードでナイフを弾き飛ばすと同時に、相手の背後へ回る。
 そのまま、首根っこを掴み、地面へと押し倒した。
 妙だな。
 こいつ等、妙に弱すぎる。
 スキル使いの総本山でもある本陣に襲撃をかけるには実力不足だ。
 こいつらは一体・・・・・・

 そして気がつく。
 僕が弾き飛ばしたナイフが、そのまま地面に転がっている事に気がつく。
 通常の武器スキルなら、持ち主の手から離れると一定時間で消滅してしまう。
 なにか、特殊なスキルを発動させているのか?
 警戒しながら、そのナイフに近づいてみると・・・・・・
 それは、武器スキルなどではなく、本物のナイフだった。
 なんで、本物のナイフなんて使っているんだ?
 その疑問は、周囲の状況に気を向けた。
 制圧させた敵の周りには彼らの武器が散乱としている。
 襲撃者たちの武器はスキルではなく、実物の武器が占めている。

 「こいつ等、まさか・・・・・・ スキル使いじゃないのか?」 


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