スキルゲ

チョーカー

本陣、敵襲

 彼女にエルという名前を贈り、僕は心の中でヤレヤレと声を漏らす。
 問題は何も解決していない。それどころか、何が問題なのかすらわかってない状況だ。
 だが、僕は彼女の名前を決めて、一仕事終えた気分なのだ。
 問題を棚上げにしてるのは、わかっているのだけれども、そもそも、僕にできることがわからないのだ。
 わからない。わからないと、わからないづくし。
 何をするべきなのか?
 わからないならわからないなりに、適当な当たりをつける段階なのだろう。
 さて・・・・・・ 何をするべきなのだろうか・・・・・・
 そんな思考も、次の瞬間には爆破音でかき消された。

 ほぼ、同時に室内の全員が立ち上がり警戒を強める。
 ただ、1人だけエルだけは不安そうな顔で、僕を見つめ続けている。
 爆発音から、僅か数秒後。
 けたたましい、サイレンが鳴り響き、アナウンスが流れる。

 『敵襲!敵襲! 現在、勢力不明の集団から攻撃を受けている。戦闘員は、配置へつけ。これは訓練ではない、繰り返す。これは訓練ではない』

 「敵襲やて、この本陣をわざわざ、襲うなんて自殺行為としか思えんで」

 僕も晴人の意見に同意するが、本陣の代表者たる艶子さんは、そうはいかない。
 素早く、室内に配備されている黒電話を手に取り、状況の確認を行う。

 「それはわかっているわ。落ち着いて、現在の情報だけを教えてくれればいいから・・・・・・ええ、そうよ。ありがとう」

 艶子さんは、そのまま支持を出し、受話器を置いた。
 そして、深く深呼吸して、次のことを告げた。

 「敵は複数人。女性が多い。だが、先頭に立つ者は青髪の男で、攻撃は爆発物を操る魔法系スキル使い」

 僕は息を飲み込む。
 青髪の男で爆破の魔法系スキル使い。
 そのキーワードは北川幸二以外にありえない。
 しかし、初めて彼と合い、戦ったのは、僅か数時間前。
 こんなにも早く、しかもこの場所に奇襲をかけてくるなんて・・・・・・。
 この場所を攻撃するという事は、この街に住む、全てのスキル使いを敵に回すと同じこと意味する。
 そこまでの覚悟なのか。何が、奴をそこまでさせるのか?
 僕は自然にエルを見る。
 奴の目的は不明だ。考えてみれば、最初に僕らに攻撃を仕掛けてきた理由すらわかっていない。
 しかし、僕らが天使の噂話を聞き、空へ浮かぶ人間らしき影。
 それを追いかけていた時に北川幸二は現れたのだ。
 彼女、エルと北川幸二に接点があるのか? いや、あると考える方が普通だろう。 
 しかし、彼の目的は何なのか? エルがいる時に本陣を襲う。これが偶然だとは考えれない。
 ならば、エルこそが奴の目的だと考えて間違いはないだろう。
 おそらく、奴の目的はエルの奪還。
 そのために、そのためだけに本陣を敵に回すのか?
 エルのためにこの街の全てのスキル使いを敵にする。
 いくら、考えても、北川幸二の本当の目的は推測できない。
 ならば、ここで奴を倒す。 気がつくと僕は、みんなの制止を振り払い、部屋から飛び出していた。

 
 

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