スキルゲ

チョーカー

天使の歌声?

 「服まで復元されていく……」
 僕は晴人から降りて、周囲を見回す。だが、回復スキルの持ち主は見当たらない。
 このスキルは、相当な広範囲に及ぶようだ。

 「回復スキルなんて誰も見たことないスキル持ち。しかも、この強度のスキルやで……。そんな奴が無名ちゅうのは裏があり過ぎて透けとるわ」

 ん?どこか奇妙だ。
 回復スキル。かつて、晴人は存在しないと言っていたが、なぜ存在しないと断言できるのか?
 僕らの世界は、それほど情報が飛び交っている世界ではない。
 むしろ、情報は閉じてる世界と言ってもいいかもしれない。
 当たり前だ。堂々とモンスターやスキルの話をおこなって、ゲームの話だと思われたら御の字だ。
 下手をしたら狂人扱いされかねない。
 だから、こそ情報屋という職業が大金を稼げているのだ。
 では、なぜ晴人は「回復スキルは存在しない」と断言できるのか?
 それにどこか、晴人は苛立っている感じがしている。

 あー。ごちゃごちゃ考えて頭がパンクしそうだ。
 めんどくさい。さっさと回復スキルの持ち主を見つければ、いろいろとわかるだろう。

 「おい晴人。たぶん、回復スキルを使ってる奴なら、こっちの方向だぜ」
 「ん?どうしてわかる?」
 「今の僕は体がボロボロ過ぎて、回復の強弱が如実にわかるのさ。単純に回復のスピードが速い方角にソイツがいると推測しただけだ」

 なるほど、と短く答え晴人は駆け出した。
 こっちは怪我人だぞ、そう抗議をしようと考えたが、実は走った方が回復スピードが増して、楽になってたりもする。
 しばらく、晴人の後を追いかけていく。
 どのくらい走ったのだろうか?息は上がり、自分の呼吸音が雑音に感じた頃、ようやく晴人は足を止めた。
 しかし、肝心のスキル使いがいる様子はない。

 「歌や……。歌が聞こえる」
 「え?」

 自分自身の呼吸音がうるさすぎて、何を言ってるのか理解できなかった。
 ゆっくりと大きく息を吸い。そのまま止める。
 それを数回繰り返し、無理やり呼吸を整える。
 すると……
 僕にも歌が聞こえた。

 女性の透き通るような声。静かで優しい声。
 バカな。この僕が癒されているだと!
 芸術に関心のない僕ですら存分に心を揺さぶられている。
 これが歌なのか。

 そして、その歌声の方向には女性がいた。
 いや、その容姿は天使だった。
 なぜなら、彼女には背に羽が生えているから……

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