スキルゲ

チョーカー

回復スキル?

 僕と晴人も人が来る前に現場から離れた。
 しかし、どうするか? 爆発で、僕の衣服はボロボロだ。このまま学校へ戻るという選択肢はなくなってしまった。 もっとも、ボロボロなのは衣服だけではない。
 所々に火傷をおっていてヒリヒリと痛みがする。それに加え、爆破のダメージも少なくはない。

 「思ったんだけれど」
 「なんや?」

 晴人は面倒くさそうに返事をする。
 来た時とは逆に僕をおぶっているのキツイのかもしれない。

 「爆発だけは実際あったんだから、あの場に留まって被害者ヅラしといても問題なかったんじゃ?」
 「いや、それ思いつくなら離れる前にしてほしかったわ」

 晴人は、がっくりと力が抜けたようだった。

 「せやかて、授業中に抜け出して、あの場所にいたって不自然やろ?」
 「だったら、こうだ。授業前に校門付近で青髪ロン毛がマントを翻していた。誰がどう見ても立派な不審者だ。普段の僕らなら『おかしな奴もいるものだ』と気にもしない。だけれども、その時は虫の知らせというか、第六感が働いて、僕らはその不審者が気になって追っかけていった。するとどうでしょ?男は、人気のない場所で、懐から時計のついた何かを置き、走り去っていった。このシナリオでどう?」
 「お前、北川幸二をテロリストに仕立て上げ、司法に委ねる気やな。相変わらず鬼やわ」
 「ダメか?授業をサボっても許されて、北川幸二も実害を与えられて一石二鳥なアイディアだと思ったんだけどなぁ」
 「いやいや、国家反逆罪の免罪を与えようとすんな。シャレにならんわ。あと、それをサボタージュと同系列で語るなや」
 「そう言えば、サボるの語源のサボタージュには破壊活動って意味もあるぽいなぁ」
 「ほう、だったらピッタリや。このまま、とんぼ帰りで戻りましょうか?」

 そんな、ゆるい漫才をいつものようにやっていたが、途中から違和感を感じるようになってきた。
 どうやら、それは晴人も同じらしく、僕らは警戒感を強める。

 「なぁ晴人。気がついてるよな?」
 「なんやろな?何かがおかしいって事はわかるけども、そのおかしい部分ちゅうのがわからへん」

 それはそうだろう。
 戦いで全身にダメージを負ってる僕に対して、晴人のダメージは軽傷。
 この差がこの現象に感じる違和感の強弱を生み出している。
 いや、それだけではない。この現象は晴人にとっても未知のもの。
 僕は、晴人に出会ってスキルやモンスターについて説明を受けた時、晴人自身から、この現象は存在しないものとして説明されていた。

 「実は、さっきから火傷が異常なスピードで治っていってるのだが・・・・・・」

 晴人は沈黙。
 おぶられた状態からは、今、晴人がどんな表情をしているのかは、わからない。
 僕らはおそらく・・・・・・
 この世界には存在しないとされているスキル。回復スキルを受けているのだ。

 

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