船に揺られて

　あの後、晴人と加藤に助けられた。
　どうやら、僕の推測した通り、あの場所は地下にあったらしい。地下の内部が崩れてしまったせいで、島の地形が変わってしまったようだ。最後の最後まで、あの男のやることは無茶苦茶だったという事だ。
　地上に脱出した僕らは、変わり果てた大地に呆然とするばかりだった。
　しばらく、惚けていると船が来た。
　ラプラスの魔物を討伐するための編成部隊が、ようやく到着したそうだ。
　その数、数百人。
　当然ながら、僕らは英雄の凱旋とはならず、先走った事に大目玉を食らう結果になった。

　船に揺られ本土へ帰る最中、僕は晴人と話した。
　加藤は、最後に仇を討てなかったことに不貞腐れて、どこかに雲隠れしてしまったようだ。
　「さて、これどうしたものかな」
　僕のウインドウが新たなスキルが追加されていた。最後に西田健一から例の仮面を伝承されたみたいだ。

　「呪わてるかもしれへんから装備したらあかんで。着けたら西田健一の人格が・・・・・・。ってなったらシャレにならへんわ」
　「それはシャレにならないわなぁ。本当にありそうなだけに」

　まぁ、一度は本陣の詳しい連中に見てもらうことにしよう。彼がやってきた実験は非人道的ではあるが、公開することで多くの人の役に立つ情報になるだろう。

　「しかし、なんで彼女はあそこにいたのだろうか？」

　僕は、あいちゃんの事を考えていた。
　吸血鬼というモンスターの少女。そんな彼女が四方を海に囲まれた孤島に現れた。
　もしかしたら、僕の知らない方法で海を渡った可能性は捨てきれない。
　でも、彼女が現れて結界が発生しなかった理由だけはわからない。

　「もしかしたら、あの子はモンスターちゅう枠を超えたのかもしれへんな」
　「枠？」
　「例えば、ロボットが進化したら究極的には、ほとんど人間とか変わらなくなる的な理論があるやん？」
　「嗚呼、彼女はモンスターじゃなくなってたわけか」
　「そうや。そう考えたほうが幸せだろう？」
　「そうだね。幸せだ」

　そんな会話を続けていると陸地が近づいてきた。

　「さて、2日も無断欠勤したんだ。明日は学校がんばるぞ」
　「お前、最後に嫌なこと言いやがるな」

　僕らは、声をあげて笑いあった。
　ふと、陸地を見るとピンクの髪の少女が待っているのが見えた。