スキルゲ

チョーカー

闘技場での決闘3

 頭の回転がフルスロットル状態が原因なのか、頭部に熱を感じる。
 知恵熱みたいなものだろうか。そんなモノは無視だ。
 西田健一の攻撃を予想して受ける。攻撃に転じる時はフェイントの数を増やしていく。
 熱は頭痛へ変化して、ズキズキと痛みが頭に加わる。
 いいぞ。まだ、痛みを感じる程度なら、まだ限界じゃない。もっと、やれる。
 加速を途切らせるない。この程度の事で脳が壊れてしまうなら、ささっと壊れてしまえ。
 神経が焼き切れてしまうのなら、焼き切れてしまえ。
 相手は命懸けで闘うどころか、死ぬために戦っているんだ。
 こちらも投げ出さないと勝てるはずがないだろ。
 何を? 何を投げ出すのか?
 命とか、生命とか、そういったものを投げ捨てるつもりなのか?
 嗚呼、僕は、無駄な事を考えてるのだろう。
 そんなことを考えてる暇があるなら願うべきなんだ。
 もっと速さを・・・・・・

 地面に叩きつけられたのは何度目か? 最初のうちは、痛みを闘志に転換して攻撃に向かって行ったが、いつの間に痛覚は麻痺してたようだ。
 立ち上がる時間すらもったいない。僕が速度を求める祈りの時間が減ってしまうではないか。 

 「私の自殺のために、無茶をしてくれてるじゃないか」

 極度に集中するあまり、聴覚の機能が停止してたようだ。
 目の前の西田健一が何か喋ってる気がするが、うまく聞き取れない。

 「君が壊れる前に決着をつけよう」

 なんとなく、理解はできた。おそらくは、最後のぶつかり合いを申し出てきたのだろう。
 ならば受けよう。
 今まで以上に速く、予想を超えた動きをイメージする。
 予想。西田健一の攻防を予想する。
 そうだ。僕たちは予想する怪物、ラプラスの魔物と戦い、学んだじゃないか。
 予想や予測、未来なんてもの存在しない。
 あるのは無限の可能性だけだ。
 だったらどうする? その可能性を乗せて、一撃を放つのみ。

 西田健一の攻撃が見える。コチラにむかって突きのモーション。
 ならば、僕も同じ突きのモーションを開始する。
 筋肉が悲鳴をあげる。幻聴ではなく、全身から異音が聞こえる。それを僕は無視をする。
 脳みそが悲鳴をあげる。まるでハンマーに殴られてような痛みの頭痛が連続して起きる。それを僕は無視をする。

 放つは、最速最高の一撃。

 たぶん、これはオーバーヒートを起こした、僕の頭が見せている幻覚なのだろう。
 西田健一に向かうソードがぶれ始め、剣先が分身したかのよう、複数に分かれ突き進んでいく。
 あんなにも速さへの祈りを捧げたにもかかわらず、世界はゆっくりと動いている。
 最後に西田健一の表情には驚きが浮かんでいた。
 最後の最後で、僕は彼の想像を超えることができたようだった。 

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