スキルゲ

チョーカー

リベンジ前

 
「う~ん、う~ん」 

 僕は唸っていた。
 ラプラスの魔物の倒し方。そうは言ってみたが、本当にあのラプラスの魔物に通用するのか?
 あれが、本物の『ラプラスの魔物』なら、その攻撃方法は『予測から未来を確定する能力』ということになる。だが、あれは本物なのだろうか?
 例に出すならあいちゃん。彼女は吸血鬼だ。だが彼女は本物の吸血鬼なのだろうか?
 もしも、彼女が吸血鬼伝承をモデルに作られたモンスターだとしたら?
 それはオリジナルの吸血鬼とは別の存在になる。
 そうなると本物に有効な手段でも、通用しないかもしれないのだ。
 そもそも、この世界のモンスターってなんだ?
 僕らの使ってるスキルってなんだ?
 どんどん、思考が深みにハマっていき、混乱してくる。

 「てめぇ、何をそんなに唸ってやがる?」

 誰もいないと思ってた部屋から声がして、若干驚く。
 いつの間にか室内に加藤がいた。
 窓際で海を眺めている様子から、結構前からいたようだった。

 「ラプラス攻略法とやらの事か?芳しくないようだな」
 「こればっかりは実際にやらないと効果はわからないからね」

 そうか、と短い言葉を残して、加藤は海を眺め続ける。
 眺め続け、そして予想外なことを口にした。

 「俺は、自分の手で仮面の男を仕留めたい。お前の言う攻略法は少人数で可能か?」
 「可能だと思うが・・・・・・。前から気にはなってたけど、加藤の言う仇討ちって比喩じゃなく、本当に西田健一を殺すって意味なのかい?」

 加藤の強い視線に射抜かれた。だが、それは一瞬の出来事。加藤は視線を海へ戻した。

 「復讐からは何も生まれないとか、相手と同じ事をしているに過ぎないとか、そういう理屈で納得できるなら、仇討ちなんて言わないわなぁ」

 殺すよ。加藤はそう付け加えた。

 「人を殺して社会に戻れるなんて思っちゃいない。だからと言って、自分で死ぬのも性に合わない。すべてが終わったら、野垂れ死にするまでは生きちゃみるさ」

 吐き捨てるような声だった。僕には肯定も否定もさせない。そんな言い方だった。
 今、僕が言える言葉は何か?必死で探した。探して、探して、ようやく出た言葉は・・・・・・
 「僕らだけでラプラスの魔物を倒そう」だった。
 そんな陳腐な僕の言葉に加藤は短く笑った。
 

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