スキルゲ

チョーカー

ラプラスの魔物

 例によって晴人に抱えられた状態で、次の島へ向かう。
 徐々に禍々しいプレッシャーが近づいてくる。一体、あの島にいるモンスターは何なのか?

 「大体、ここら辺がギリギリ結界外って所やな」

 一見、余裕そうな晴人だが、頬に汗が伝って落ちていく。
 加藤も険しい顔つきで何も喋らない。

 「引き返すか?」
 「せ、せやな」

 僕の言葉に晴人は答え、加藤も静かに頷いた。
 だが・・・・・・

 「私を追いかけてきてくれたのかい?可愛い連中め」

 話しかけられた。
 ごく自然に、さわやかに、フレンドリーに、空中で、背後から。
 振り向くと、当たり前のように素顔の西田健一が宙に浮かんでいた。まさか、飛行スキルまでもっていたとは想像にもしてなかった。
 しかし、何故出てきたのか?僕等は移動スキルを基準に推理していたが、飛行スキルまでは想定外。2つのスキルを駆使して隠れれば、僕等が見つけることなど不可能だっただろう。

 「実は、とある実験が成功してしまってね。本当は失敗するのを望んでいたのたが・・・・・・。この世の全てに興ざめしてる最中なんだよ」

 西田健一は、良くも悪くも理想主義者。そして、同時に野心家でもある。
 別によく知る間柄というわけではないが、仮面でも隠しきれないほど、ギラギラと餓えながらも活力に満ち溢れる目をしている。
 今は、それが見る影すらない。
 まるで死んだ魚のような目に変わっている。

 「私にはね、殺人ですら許される免罪符だったんだよ。でも、真理に到達してしまうとどうでもよくなってしまった」

 やはり西田健一は、どこか、何かおかしい。 弱々しい仕草で、僕らの前方を指差す。

「あの醜い成功作を代わりに殺してきてよ。お礼に殺されてあげるから。心配しなくても私が死んだら、あいも自決して後を追うように言ってるから、全て解決するよ」
 笑う。西田健一は狂ったが如く笑う。

 僕等は、その狂気を前に一言も発せずにいた。まるで迫力だけが凄く、出来の悪い舞台を見せられてるようだった。 
 「それじゃ頼んだよ。私はあの島の地下にでも待っている。それじゃ、あのモンスター。ラプラスの魔物を殺しといてね」

 そう言うと、西田健一の周りにモヤがかかり、消え去った。
 まるで悪夢でも見てるようだ。
 僕等みんな、状況が理解出来ずに呆けていた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品