スキルゲ

チョーカー

低空偵察

 ここから見える数々の孤島。この中のどこかに仮面の男、西田健一が潜んでいるのかもしれない。
 猛る気持ちとは裏腹に、僕らは待ちぼうけをくらっている。
 この場所は、僕らの住んでいる街から南下して30キロほど。
 本陣の威光が届かない場所だ。海の中に屋敷の跡が沈められているのはわかっているが、引き上げるにも、この街の顔役的な連中に話を通さないといけないらしい。
 確かに、前回と同じ人数で攻めるとしても100人。急に100人のスキル使いが現れ、戦闘体勢を整えていると話が広まったら、地元連中とトラブルになりかねない。
 メンドくさいが、組織立って動きには事前の準備が複雑化するということなのだろう。

 ボッーっと水面を眺めてると、海中から黒い玉が出てきた。
 黒の玉の中身は晴人だ。黒炎をシャボン玉のような球体へ変化させ、海に潜って探索をしていた。
 しかし、異常なくらい利便性の高いスキルだな。

 「すぐそこに屋敷の残骸が転がっとたで。本当にこの付近に潜んでるみたいやな」
 「そうか・・・・・・。ご苦労さま」

 あと、どのくらい待たされるのだろうか?歯がゆい状態のまま・・・・・・あれ?

 「なーなー、晴人」
 「あん?どうした?どうした?」
 「お前、飛べるよな?」
 「・・・・・・」 
 「・・・・・・」
 「その手があったかッ!」

 大掛かりに人員を投入すれば、問題になるかもしれない。
 だが、尖兵。少数精鋭部隊なら、問題にならないのでは?
 まぁ、晴人はともかく、僕と加藤ではレベル的に少数精鋭と言い難いなんてかもしれないけどね。
 そんな、こんなで3人パーティで空から偵察することになった。
 方法はシンプル。晴人が腕力で僕と加藤を抱きかかえる状態で飛ぶのだ。
 「死ぬわ、ボケ」と顔色が赤くなったり、青くなったりする晴人を横に偵察を開始した。

 こうやってみると、西田健一が海の孤島を潜伏地に選んだ理由が分かってくる。
 島に部隊を投入するにしても、多くの船が必要になる。
 僕ら素人が、夜間に船のライトを消して奇襲をしかけるなんて不可能だろう。
 やるなら正攻法しか使えない。だが、昼間に大量の船が向かってくれば、西田健一は瞬間移動のスキルを使って逃げるだろう。
  それにあいちゃんを単独で陸地に潜ましているのが気になる。
 直ぐに思いつく理由は、別働隊。 西田健一の居場所がわかり、討伐となると本陣の人員は削られる。
 そのタイミングで何か仕掛けるつもりじゃないだろうか?
 あの男は、自分を囮にすることすらやりかねない。

  正直、尖兵や偵察と言ってはみたが、本心では、西田健一を発見次第、決着をつけるつもりだ。




コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品