スキルゲ
夜に消える屋敷
「があっ!?」
机に叩きつけられた衝撃に声が漏れる。
なんとか、机と頭の間に腕を滑り込ませ直撃だけは避けれた。
だが、脳へのダメージは完全には防げず、脳震盪が起きる。
判断力の低下。その隙をついて、西田健一は僕の後頭部から腕を外す。僕の右腕を掴んだ腕はそのままに、もう一本の腕も右腕に絡ませた。
フジワラアームバー。脇固めへ移行される。
関節が極まる前に前転でエスケープを狙うも、机が邪魔で逃げ切れない。
ミシッ ミシッと関節が軋む音が聞こえる。
あと僅かに力を込めるだけで、僕の関節は壊れる。
「どうして・・・?」
「そう、不思議だよな。立ち上がる動作が攻撃の合図だったのになぁ」
「なんで、どうして知っている!」
あの日、会合の最中に僕は、仮面の男からの招待を話した。
罠の可能性も述べ、僕自身が襲撃を募ったのだ。
その場にいる100人。ほぼ、全員が賛同してくれた。
「答えは、単純に潜んでいた100人を虐殺したからだ」
僕は雄叫びを上げる。
再びスキルを発動させる。今度は、通常の移動スキル。それを関節を極められたままの状態で使用する。その結果、西田健一もろとも体が浮かび上がり、そのまま、正面の壁に激突する。
頭部を生ぬるい液体が覆う。どこか切れて、流血してるみたいだ。
だが、おかげで西田健一の拘束から逃げる事に成功した。
彼を見ると、彼もまた額から血を流している。そして、不気味に笑みを浮かべている。
「まさか、こんなスキルの使い方するとは思ってもなかった」
西田健一は、頭を抑えながら言葉を続ける。
「冗談だよ。冗談。落ち着いて考えてみなよ。君と会話しながら100人を殺す余裕なんてなかったじゃないか」
それは、確かにそうだ。少しだけ、冷静さを取り戻す。じゃ、一体・・・・・・
「一体、どうして襲撃が起こらなかったのか?そう聞きたいようだな」
まるで僕の心を読んだかのような口調。悔しいが肯定する。
「私たちは、スキルによって物理法則すらねじ曲げる事ができるじゃないか。君が足を踏み入れた瞬間に屋敷ごと移動させたのさ。いやぁ、彼らの呆けた顔が見えなかったは、残念だった」
スキルで、そんな大掛かりな事までもが可能なのか?
僕は、少なからず衝撃を覚える。
この男は、どれくらい強烈なスキルをもっているのか?
それに加速した僕の攻撃を避けた、あの動き。
あれは、僕のスキルと同一のスキルだったのではないか?
目の前の男と自分。スキルのスペックは違いすぎる。
援軍を期待できない状況下で戦って勝てるのか?
だが、やる。
そう誓ってここに来たのだ。それを忘れたわけではない。
心を決め、西田健一との対決を行う。
しかし、肝心の相手は、僕に背を向けた。
「振られちゃったようだが、私は諦めたわけじゃない。心変わりがあったら、いつでも歓迎しよう」
そう言い残すと、まるで蜃気楼のように消えていく。
それは周囲にまで広がり、屋敷も消えていく。
残ったのは僕1人。場所は、どこかの公園のようだ。
いろんな混ぜり混じった感情が僕の中になだれ込んできた。
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