スキルゲ

チョーカー

メッセンジャー

 
 門田愛 通称、あいちゃん。 

 ゾンビに襲われているのを僕自身が救った少女。
 だが、それは仮面の男の罠であり、彼女の正体は吸血鬼だった。
 その能力で艶子さんの血を啜り、モンスターに変えてしまった少女。
 現在、僕らが最重要の目的としてるのは、彼女の心臓に杭を打ち込むこと。
 そんな彼女が僕の目の前にいる。
 おそらく、僕が戦ってきたモンスターとは規格外の強さ。それに噛み付かれれば、僕自身も艶子さんのようにモンスター化してしまうという一撃必殺つき。

 例え、僕のベットで寝転がって、両足をバタつかせながら漫画を読みふけっていてもその恐ろしさは変わらない。

 鼓動が高まっていく。
 どうする?逃げるか? しかし、偶然、僕の部屋で漫画を読んでるわけではないだろう。
 自宅を知られている。それは、ここで逃げても何も解決しないということを意味している。
 おそらく、彼女の単独行動ではなく、仮面の男の指示で来ているではないか。
 だが、この場は逃げよう。 
 あいちゃんが僕を殺すつもりで来てるなら、成すすべもなく殺されるだろう。
 気がつかないうちにこの場から離脱するんだ。
 そう、後ろに向かって足を踏み出した瞬間にあいちゃんがコチラに振り向いた。
 目と目が合う。
 最大の緊張感が僕を襲う。

 「あっ、おかえりなさい。おにいちゃん」

 笑顔で挨拶された。どうすればいい?

 「た、ただいま、あいちゃん」
 なんとか挨拶を返すことに成功した。

 「わたし、ご主人さまから伝言をう、うけ、承ってきたんだよ。メッセンジャーだよ」

 意外にもフランクな感じで、舌っ足らずの感じの喋り方。いきなり殺されるって事はないのかもしれない。

 「ご主人さまって言うと、あの仮面の人の事かい?」

 僕はできるだけ刺激しないように優しげな口調で質問した。

 「うん、よくわかんないけど、わたしがご主人さまって呼ぶと性癖を刺激されるんだって」
 「・・・・・・。」

 あの仮面の男のそんな性癖は聞きたくない。
 思わず沈黙してしまった僕が気になったのか不安そうな顔で見上げてくる。
 どこか、そんな、彼女に違和感を感じていた。
 僕に対する敵対心のなさは、余裕から来るものだろうか?彼女の言葉を信じると、仮面の男が僕に要件があるようだが?
 それより、なにより、僕が気になったのは
 「どこか、口調というか、言葉使いが違わないかい?」

 思わず、疑問が声に出てしまっていた。

 「口調?言葉使い? ああ、今はまだ夜じゃないからだよ」

 ん?夜になると口調が変わるのか?

 「あたしは吸血鬼だからね。お日さまが登ってると力が入らないんだよ」

 そうか吸血鬼だからなのか。僕は自然と外に目をやると、太陽はサンサンと輝いていた。それと口調の関係性はわからなかったが。

 「あくまでメッセンジャーだから、信じてもらえるように弱い時間帯にきたんだよ」
 「なるほど・・・・・・。じゃ、その伝言って一体どういうものなのかな?」

 「ご主人様は二人きりで話をしたいから、メモの場所に来てくださいって」

 僕は、あいちゃんの差し出したメモ用紙を受け取った。
 場所を確認すると、家から近い住所と時間が書かれていた。
 ここに行けばいいの?そう確認しようとしたら、あいちゃんはすでに消えていた。

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