スキルゲ
決着その2 佐々木さんの剛拳
助けれた。
なんとか、助けれた。なんとか、助かった。
もう、それしか考えられなくなって、全身から力が抜けていく感じがした。
僕の体は脱力状態になり、地面に座り込んでいた。
艶子さんを見ると、流石に体は本調子といかないようだが、意識はしっかりとしてるようで、目で合図をしてくれた。本当に大丈夫のようだ。
「喜ぶのはまだ早いで。とりあえず決着つけようか」
晴人は僕の肩をぽんぽんと叩いた。
「わかってる。香さん、艶子さんをお願いします」
そう、格好良く言ってみた。
だが、あいちゃん、門田愛と佐々木良嗣の戦いを見て唖然となった。
考えてみれば、あいちゃんは吸血鬼であり、噛まれるとモンスター化する一撃必殺持ち。
そんな相手に佐々木さん1人で挑み、それに他の面々が何も言わなかった。
その時は、全く違和感すら感じなかったが、佐々木さんの状況を見て納得してしまった。
岩だ。岩がある。
比喩でもなんでもなく、ただ岩が存在しているのだ。
その岩に対して、あいちゃんは高速で周囲を飛び周り、爪を変化させたソードで岩に斬りかかっている。
その状況で岩の正体が佐々木さんだということがわかった。
あれは、そこら辺の岩を身につけて鎧にしてるのだろうか?
それとも、岩をモチーフにした鎧を召喚してるのだろうか?
人間サイズの岩の重さを考えると、後者なのだろうが、佐々木さんの常識離れした筋肉が前者の可能性も感じさせる。
この世界の戦いでは、攻撃よりも防御が重視される。なぜなら、漫画やゲームのように怪我を安易に治す方法がないから、大怪我をすれば死に、普通に怪我をしたら病院へ行き、入院する場合もありえる。
だから、レベルが高ければ、高いほど防御スキルに力を入れるのが必然なのだ。
たとえば、晴人。彼も黒炎を使う派手なスキルとは逆に防御型のスキル使いだ。
その晴人と比べても、佐々木さんのスキルは鉄壁というイメージを持たせる。
言うなれば、全方向防御型スキルと言えばいいのか。
「やれやれ、私はゲームでいうタンク役。味方の盾になるのが本来のスタイルなのですが・・・・・・」
『どうやら、これで攻撃に転じれますね』
岩が動いた。その容姿は、まるでゴーレム。
人間の佐々木さんがモンスターに見え、モンスターのあいちゃんが可愛らしい少女の人間に見える。
第三者が見たら、全力であいちゃんを助けようとするだろう。
人間は、自身の容姿に似た存在を助けようとする。たしかSFで使われる表現だったかな?
僕は、そんな場違いなことを考えていた。
それは、そんな緊張感のなさを演出させる佐々木さんの安定感のせいだろうか?
「黙れ、黙れ、黙れ。私は特別なんだ。私はパパが、パパに。ああ、もう死んじゃえば?」
あいちゃんの形状が変わっていく。
背中から巨大な羽が生えていく。目は赤く光、口から牙のようなものが覗いている。
こころなしか、手足も伸びてるように見える。
あいちゃんの攻撃は連撃。佐々木さんの周りをまとわりつくように飛び周り、ソードで佐々木さんの装甲を削っていく。
「アハハハッ どうしたの雑魚? 私がミキサーのように削り殺してあげるね」
だが、そうはならなかった。巨大な音と共に地が揺れる。
そして、佐々木さんの剛拳があいちゃんの顔面を打ち抜き。
あいちゃんは冗談のように空に吹き飛んでいった。
「あれは震脚?まさか八極拳?」
「知っているのか?らい・・・・・・賢志?」
パンチ。
単純に殴るという腕を使う行為に下半身が重視されている。それはなぜか?
それは、踏み込みの速度と強さによって拳の威力を増しているからだ。
踏み込みの一歩。
たがが一歩、されど一歩。
一歩であれ、人間は前に進んでいる。
その速度が速ければ速いほどパンチ力が上がるのは当たり前だ。
そして、強い踏み込みの一歩には急ブレーキの意味もある。
急発進と急ブレーキ。それをわずかなタイムラグで行うことにより上半身はさらなる加速が行われる。
それが、全身が石の塊と化したような佐々木さんの超重量級の肉体で行われたのだ。
その威力は僕らの想像を絶するものになったのだろう。
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