スキルゲ

チョーカー

VSゾンビ 上位スキル発動

 一撃でも食らうと死。
 その恐怖が一瞬、一秒を長く感じさせる。逆に、その感覚がありがたい。
 僕は集中力を高める。このスキルに必要なのはイメージ力。
 一度、発動させてしまえばキャンセルが効かない。だから、スキル発動前にルートを頭に叩き込む。
 攻撃を当てさせない。触れさせない。かすることすら許させない。

 スキル発動

 一瞬でゾンビ達との間合いを詰める。
 まず、1体目はすれ違いざまに首をはねる。
 止まらず2体目。胴への一撃で切断を成功させる。
 3体目、スキル停止直前に繰り出した突きが胸を貫く。
 そのまま、少女の体を抱きかかえ、バックジャンプと同時に移動系スキルを発動。
 瞬時に晴人達の元へ戻った。
 あまりの早技を称える声が聞こえてはいるものの、それに答える余裕はなかった。
 僕の手に帰ってきた感触は、スライムを切った時とは違う。
 本当に生物を殺したかのような感覚だった。


 移動系スキルの上位スキル。
 ウインドウにはスキルの名前らしきものが書かれているが、僕らには読めない。
 自分のスキルを自分で名付けるのが普通らしいが、晴人がスキルに名前をつけていないので、僕にも名前を付ける風習がなかった。
 でも、移動系スキルと併用すると他者への説明がややこしくなったりするので、いずれかは名前をつけないといけなくなるだろう。
 そして、スキルの説明。
 この上位スキルの説明を簡単に言うと『移動スキル発動時のスピードを維持して動ける』というものだ。つまり、通常戦闘の攻撃が人間離れした高速の動きで可能になる。
 発動後の高速移動中に自由に動けるわけではない。
 なぜなら、人間の反射神経が超えた動きをしているからだ。
 そのため、スキル発動前に攻撃の動きをイメージしておかないと、ただの高速移動に終わってしまう。
 だから、『一度、発動させてしまえばキャンセルが効かない』というスキルなのだ。

 僕の腕の中にいる少女は気を失っているみたいだ。 
 「この子、どうしようか?」艶子が少女の頭を撫でながら聞いてくる。 
 この子は結界の中にいる。僕たちのようにモンスターに襲われ続ける運命を背負ってしまったのだ。

 「どないも、こないも、しばらくは、俺らが守るしかないやろ?」

 晴人の言葉にみんなが頷く。
 もしかしたら、こういう経験を何度かしてるのかもしれない。

 

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