スキルゲ

チョーカー

夜、歩く死体達

 
 ゾンビ‥‥‥。
 ゾンビ ゾンビ ゾンビ ゾンビ‥‥‥。

 見渡す限り、町中にゾンビに埋め尽くされてる。

 「大量発生とは聞いてたけど、100や200の数じゃないぞ」

 僕のイメージでは、バイオハザード(生物災害)をテーマにした某有名ゾンビゲームを連想してたのだが‥‥‥。
 ほとんど人間と変わらない形状のモンスター達の大行進。
 なんというか、リアルに気持ち悪い。
 これを殲滅なんてできるのだろうか?

 「後輩よ、心配するな。このために俺がいる」

 静かに住谷正平が前に出る。
 武器スキルが発動され、手に武器が現れる。
 野球選手らしく、バットのような武器。おそらく、鈍器カテゴリーの武器なんだろう。
 鈍器系なら十字架を模した武器もあるらしいが、対ゾンビのスペシャリストと言われる人の武器がバットと言うのは、少しだけ拍子抜けしてしまった。
 正平は、打席に立ったバッターのように、バットを1回、2回と円を書くように回した。
 それに気がついたのか、ゾンビがこちらに向かってきた。
 ゾンビと言えば、歩くよりも遅く、ゆっくり向かってくるイメージだが、それよりは速い。
  せいぜい、小走り程度‥‥‥。
 だが、それが10体を超える数で同時に襲ってくる。どうやって鈍器で対処するのか?
 正平は、動きを止め、バットの先端をゾンビ達に向ける。
 こんな時に予告ホームラン?そんな僕の疑問を轟音が吹き飛ばした。
 バットと思っていた武器の正体は、火炎放射器。
 向かってきたゾンビどころか、周囲に見える限りのゾンビの全てを炎に包むくらいの広範囲。
 火炎放射が止まった後は地獄絵図だった。
 炎に焼かれたまま、ゾンビがそれでも進もうとして、次々に事切れていった。
 あとには、凄まじい悪臭が残るだけだった。まるで、本物の人間が焼き殺されたかのような錯覚を受ける。いや、事実、この中にも本当に人間だった人がいる事を思い出す。
 そう考えてしまうと、『本当に救えないものだったのか?』と自分を攻めるような声が聞こえた。

 僕は無力だ‥‥‥。
 でも、まだ‥‥‥。

 自分の考えもまとまらないまま、次の展開が起こった。
 叫び声。それも若い女の子のようだ。
 声の方にゾンビがいないことを確認して移動スキルを発動させ、みんなから先行していく。
 そして見た。
 少女と言ってもいい女の子にゾンビが襲おうとしてるのを。
 後方の晴人達を見ると間に合う距離ではない。
 この場は僕がやるしかない。
 片手にショートソードを召喚させ覚悟を決める。 

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