スキルゲ

チョーカー

アンデットの恐怖

 
 「まず、アンデッド系モンスターってどんな感じかわかるか?」
 「えっと、有名なやつがゾンビとか、後は人型で骨だけのやつとか、吸血鬼も入るのか」

 僕の答えに晴人は満足そうにうなずく。
 「だいたい、正解やね。じゃ、そいつらの一番の特徴と言えば?」
 特徴?ゾンビって言うと‥‥‥。

 「動きが鈍いとか‥‥‥じゃないな。じゃ、噛まれたら仲間になるとか?」
 「そうや、俺らも噛まれたらゾンビの仲間入りや。レベルとか無関係に一撃必殺の持ってる。それがアンデッド系の恐れられる原因や」
 「一撃必殺って、そんな無茶苦茶な!」

 思わず、声を荒げてしまうほどの衝撃が受けた。
 もし、アンデットの件まで、謎の殺人鬼が関わっているとしたら?
 目的はなんだろうか?
 人を殺すだけでは飽き足らず、混沌と混乱に快楽を結びつけているのだろうか?
 それは、もはや、殺人なんて生易しいものでは表現できなくなる行為だ。

 気がつくと、さっきから喋ってるのは僕と晴人だけになっている。
 他のメンバーの方に顔を向けると、寒気が走った。

 藤川艶子
 佐々木良嗣
 車多香

 各々、彼らの顔には凄まじい怒気が浮かんでいたのだ。
 そして、晴人の表情にも、そういったものがひっそりと含まれている。
 僕は失念していたのだ。
 彼らにも、一緒に戦ってきた仲間がいるはずだ。
 そんな仲間たちを理不尽に殺してしまうモンスターが人為的に繁殖させてる存在がいるしたら、とても許されるものではないだろう。
 そして、それは仲間以外にも当てはまってしまう。
 友達や家族。あるいは恋人。
 大切な人達が、このモンスターと戦うシステムに巻き込まれる可能性が0ではない。
 僕が最初にモンスターに襲われた日。
 あれが、スライムではなく、ゾンビだったかもしれないのだ。
 僕がゾンビに成り果てたと知ったら、みんなはなんて思うか?
 逆に僕の周りでゾンビになってしまった人が出てしまったら?
 嗚呼、僕の中にも、こんなに感情があるなんて初めて知った。
 体の中心から、燃えるような怒りが湧き上がっていく。

 絶対にゆるせない。

 どうやら、普段は眠っている『正義の怒り』なんてものが僕にもあるみたいだ。

 「当面、私たちすることは2つ。犯人を探す探索チームを作ること。そしてアンデット系モンスターへ大掛かりな殲滅戦を仕掛ける事」

 艶子の発言に全員が同意する。

 「たしか、香。あなたの知り合いに対アンデット系のプロフェッショナルがいたわよね?彼は参加できそう?」

 艶子に言われ、車多は少し考えて答える。

 「正平くんかい?彼は断らないと思うけど、甲子園を目指してるからね。誘うには気が引けるんだよ」

 そう言いながら、唸ったような声を出す。そう思うと、今度は僕らに頼みごとを始めた。

 「賢志くん、晴人くん。君らが頼んでくれないかい?」
 「え?いや‥‥‥?なんで僕らが?」

 急に話が飛んできて驚いた。

 「なんでも何も、君らと同じ学校だよ? 天才スラッガー住谷正平って知らないの?」

 その名前は、僕らの学校では誰もが知る有名人だった。

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