ダークエルフさん、俺の家で和まないでください! ~俺はガチャを回しただけなのに~

巫夏希

第一話 状況整理とまいりましょう

 状況を整理しよう。
 ガチャを回したらダークエルフの剣士が俺の部屋に入ってしかもすごいスピードで日本になじんでいるみたいなんですが!

「……ガタガタ五月蠅いよ。私だって何が原因なのか探索していないわけじゃないの。というか原因ははっきりしているよ」

 そう言ってテーブルの上にあった煎餅の袋をビリリと破る。
 テレビのチャンネルは昼間によくありがちなバラエティになっている。情報バラエティ、といえば聞こえがいいが。
 煎餅を口に運びつつ、剣士は言った。

「私たちの世界……『ファンタジア』で起きている現象、リアライズについては知っているだろう?」

 こくり、と俺は頷いた。
 リアライズ。
 それこそ、ゲーム名にもなっている程、ゲーム内では重要な現象だ。
 理解すること。悟ること。
 世間一般の『リアライズ』ならばそういうことになるのだろう。
 しかし、これは違う。
 ゲーム内では架空言語として扱われているが、英語のrealとriseを合体させたもの――すなわち、『現実によみがえる』ということを示している。
 死んでしまったものが現実によみがえる技術――リアライズを使うことが出来る存在、リアライズマスターになっているのが主人公である。主人公は死んでしまった剣士や貴族、その他もろもろの戦力をリアライズで復活させることによって、自分の仲間にすることが出来る。あまたのスマートフォンゲーム業界で似たり寄ったりのゲームがリリースされていく中、はっきり言ってこれは異端だった。だからこそ、惹かれるコアなユーザーも多かったのだろう。俺もその一人だ。

「そう、その通り。そして『アン・リアライズ』が出来る唯一の存在であるのは……お前も知っている通り魔王だ」
「お前というんじゃない。俺には立派な名前があるんだ。佐藤エイジって名前が!」
「佐藤……エイジ? ふーん、長いからエイジでいいかしら。私はルイス・ビエール・エン・シルクアールアーリアス・ミルフィアート。長いからルイスでいいわよ」
「……ほんとうに長いな。俺の名前の三倍くらいあるんじゃないか?」
「さて、どうかしら?」

 二枚目の煎餅に手を付けながらルイスは笑みを浮かべる。

「……話は戻すけれど、アン・リアライズは魔王にしか出来ない特殊な技。だから魔王さえ倒してしまえば、リアライズが無効になっているから世界は平和になる……はずだった」
「はずだった……って。また不穏なワードが聞こえたぞ」
「要するにリアライズを無効にしたいのはうちらだけじゃないってこと。魔王だってほかのキャラクターのリアライズを無効にしたいことは解るはずでしょう? だって半ば無限に生まれ出てくるキャラクターの相手をしなくてはならないのよ」
「……お前がそれを言うか」
「ルイス」
「……ああ、そうだったな。まあ、それはいい。でもそれだけじゃ話が見えてこないぞ。魔王がほかのキャラクターが使えるリアライズを無効にしたい。それは解る。だが、それだけでは、ルイスがここに召喚された理由が……」
「あくまでも、ここからは私の仮説よ」

 ルイスはそう言って、煎餅の最後の一かけらを口に放り込んだ。

「魔王はリアライズを行使できる存在をキャラクターではなく、第四の壁を通った先にいるプレイヤー――いわゆる神たる存在が行使できると踏んだのではないかしら? そして魔王はリアライズ世界からこの世界へと飛び込んだ。その影響で私たちもこの世界にやってくることが出来たと考えられれば……。どう? 少しは納得できる解釈が生まれるのではなくて?」

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