ダークエルフさん、俺の家で和まないでください! ~俺はガチャを回しただけなのに~

巫夏希

第二十五話 外に出ましょう(前編)

 目を覚ますと、ダークエルフが炬燵で眠っていた。もはや風邪をひくぞ、とツッコミを入れることすら面倒になってきた。わずか三日で慣れてしまうとは、自分自身が怖くなってくる。もう少し抵抗しなかったのか、自分。

「……エイジ、おはよう」

 そんなことを思っていたらもぞもぞと身体を動かしながらルイスは起きてきた。なんというか器用なダークエルフだ。まだ三日目だぞ。どうしてこんなにも慣れるのが早いんだ?
 さて。
 俺はそれを伝えなくてはいけないだろう。
 何を伝えないといけないか、って?
 簡単なことだ。

「なあ、ルイス。ちょいと相談があるんだが」
「何だ?」

 ルイスは炬燵から出ることはないが、まあ、俺の話は聞いてくれるようだった。先ずはそこを乗り越えてしまわないといけない。もし話すら聞いてくれない状況だったらどうしようかと思っていたが、それは何とかなったようだった。もし聞かなかったら炬燵の電源でも切ってやればいい話なのかもしれないが。
 とにかく、話を進めないと始まらない。そう思って、俺は発言を開始する――。

「外に出て、リアライズ現象の謎を解明しないか」
「断る」
「うおおおおおい!? お前がもともとリアライズの謎を解決しに来たんじゃなかったのかよ! もうお前は炬燵の魔力にどっぷり浸かってしまったというのかー! 恐るべし、炬燵……じゃなくて!」
「炬燵はいいねえ……人間の生んだ文化の極みだよ」
「言うほど文化関係ねえ! ってかその元ネタどこから仕入れた! スマートフォンか? パソコンか? それともテレビ!?」
「いいじゃないか。別に私がどこから情報を仕入れようと。……因みに正解はパソコンだ。最近インターネットのテレビ局で全話放送していたのでな、見てみたよ。二十五話からの方向性が意味不明だったから、その場で円盤の箱とやらを購入してしまった」
「なにしちゃってんだ、このぽんこつダークエルフ! そのネットショッピング、俺のクレジットから落ちるんですけれど! お前、金払えるのかよ!」

 というかブルーレイボックスだとしたらそれなりの値段がしなかったか……。確か四万円程度……。返品、通るかなあ。
 閑話休題。
 そんなことよりも問題がある。

「なあ、ルイス。どうして外に出たくない? というか、リアライズの謎は解明しなくていいのか?」

 俺はまじめなトーンで言った。
 対してルイスは机に顔だけを載せて、まるで饅頭のようにとろけきった感じで、

「えー……明日から頑張るよ」

 ……ニート真っ盛りのコメントが返ってきた。
 ルイス、お前が女じゃなかったら俺はぶん殴っているぞ。それを理解してから発言してほしい。まあ、俺の拳は割かし男女平等ではあるけれど。
 しかしまあ、一日目に会ったときは(そして少なくともゲームの中では)クールで強いキャラだったにもかかわらず僅か二日でこんな感じに仕上がってしまうとは、日本が悪いのか炬燵が悪いのかルイスが悪いのか……。原因の切り分けはなかなか難しそうだった。

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