この異世界は小説でできています
Page.19 閉幕と頼み事
体調を崩したりと色々あった体育祭もは、遂に閉会式。僕達は最終順位の結果を待っていた。ちなみに騎馬戦は、ハクア先輩が圧倒的な力の差を見せて、黄色団が勝利した。僕達の赤団は二位ではあったので、今までの結果からしてみれば、赤にも優勝の可能性はある。
「本年度の体育祭の優勝は……」
高まる緊張。皆が固唾を飲んで、その瞬間を待つ中、その時がやってくる。
「優勝は……赤団です」
優勝の団が発表された途端、赤団の人達の喜びの声が湧く。それはキリハ達も同じで、
「お嬢様、聞きましたか? 私達の団が優勝ですよ」
「勿論聞いていたわよ。やったじゃない!」
「何かイマイチな反応じゃないですか?」
「気のせいよ、気のせい」
と言いながらも、僕の中では素直に喜べない自分がいた。目標でもあった優勝を成し遂げられた事は、本当に喜ばしい事なのは僕も分かっている。
でもあの騎馬戦で、僕は負けている。サキとも大きな決着もつけられなかったし、僕は本当の意味での勝利を得られなかった。それな悔しくて喜べていなかった。
「お姉様? 浮かない顔をしていますけど、体調が良くないんですか?」
「別にそうじゃないから大丈夫よ、イスミ。ありがとう」
「せっかくの優勝なんですから、もう少しあかるくいきましょうよ」
よほど元気がないように見えているのか、同じようにイスミにも心配される。うーん、そこまで元気がないわけでもないんだけど……。
「全く、優勝しておいて何でそんな顔しているのよ」
「あんたには関係ないでしょ、サキ」
「関係はないけど、気持ちくらいは分かるわよ」
閉会式が続いていく中で、サキが小声で話しかけてくる。彼女は別のクラスなのに、何でここにいるのやら。
「あのハクアっていう先輩の実力は、私も想像していた以上のものだった。現に私は指一本も触れられないまま、負けたわけだし」
「私も……全力で戦った。でも最後は傷一つもついていなかった。そう考えると私もまだまだなんだって思うと、優勝って実感が湧かないのよ」
「その想いは次にとっておくしかないわね」
「そうね。まだあなたとも決着ついていないし」
「私はいつでも戦う準備はできているわよ、ユーリティア。早ければこの閉会式が終わったあとにでも」
「それは勘弁して欲しいんだけど」
誰が好んで体育祭の後にひと勝負するものか。ただでさえ熱もあるのに、それだけは本当に勘弁してほしい。おまけにこのあと、ハクア先輩にも呼び出されているので、丁重にお断りさせてもらった。
「まあ、またいつかは戦ってあげるわよ、サキ」
「本当に?」
「私が覚えていれば、だけど」
「何よそれ、つまんないじゃない」
こんな会話をしている間にも、閉会式は着々と進み、気がつけば閉会式も終了。体育祭はこれにてお開きもなったのだった。
(来年こそは必ず、納得のいく優勝の仕方をしよう)
来年も同じようにいるかは分からないけど、僕は最後にそう誓うのだった。
(って、来年は僕達が三年だから、そもそもいないんだ)
ただ同時に、来年は先輩がいない事に気づいてしまうのだった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
体育祭かが終わってしばらくして、僕はハクア先輩に呼ばれて生徒会室へとやって来ていた。
「今日は体育祭優勝、おめでとう」
入るなりハクア先輩に祝福される僕。祝ってはくれているのだろうが、どうも感情の起伏が見られないせいか祝われている。最後の体育祭を、ある意味潰してしまったようなものだから、もしかしたら怒ってもいるのかもしれない。
「ありがとうございますって、何だかいいにくいんですけど」
「別に気にしてない」
「いや、私まだ何も言っていない」
「気にしていない」
どうやらものすごく気にしていらっしゃるようです。
「あの、それで私に話しってなんですか」
「実はあなたに頼みたい事があるの」
「切り替えは早いんですね」
気にしているならそう言ってもらいたいのだけれど、どうやら話しを切り替えるのはものすごい早いらしい。まあ、体育祭事は一旦置いておいて、
「頼みたい事?」
「あなたに生徒会に入ってもらいたい」
「生徒会……ですか?」
「そしてあわよくば私の跡を継いでもらいたい」
「跡をって、生徒会長をですか?」
頷くハクア先輩。僕の常識の中では、生徒会って選挙をして選ぶようなものなんだけど、何か特別なのだろうか。
「生徒会って、選挙とかしないんですか」
「選挙もする。でもユーリティアは特別」
「特別? 私がですか?」
「私の推薦だから、入れてもらえると思う。多分」
「会長の推薦って、私そんな推薦されるような事はしていないですよ」
おまけに生徒会長だなんて、ユーリティアならともかく、僕なんかがそんな器な訳がない。一体何を考えて先輩は、ユーリティアを推薦しようとしているのだろうか。
「噂はずっと聞いていた。私達の後輩にかなりの実力をもつ魔法使いがいるって」
「私そんな褒められるほどの実力は持ってないですよ」
「今日の騎馬戦で手を合わせて分かった。あなたなら私の跡を継げるって。むしろあなたしかいない」
「騎馬戦、私負けたんですけど」
あんな不甲斐ない結果で、推薦される理由なんてやはり見当がつかない。
「お願い、生徒会に入って」
それでも一歩も引かない先輩。僕はかなり悩んだ末に、
「数日だけ時間をくれませんか? すぐには決められないので」
少しだけ時間をもらう事にしたのだった。
「本年度の体育祭の優勝は……」
高まる緊張。皆が固唾を飲んで、その瞬間を待つ中、その時がやってくる。
「優勝は……赤団です」
優勝の団が発表された途端、赤団の人達の喜びの声が湧く。それはキリハ達も同じで、
「お嬢様、聞きましたか? 私達の団が優勝ですよ」
「勿論聞いていたわよ。やったじゃない!」
「何かイマイチな反応じゃないですか?」
「気のせいよ、気のせい」
と言いながらも、僕の中では素直に喜べない自分がいた。目標でもあった優勝を成し遂げられた事は、本当に喜ばしい事なのは僕も分かっている。
でもあの騎馬戦で、僕は負けている。サキとも大きな決着もつけられなかったし、僕は本当の意味での勝利を得られなかった。それな悔しくて喜べていなかった。
「お姉様? 浮かない顔をしていますけど、体調が良くないんですか?」
「別にそうじゃないから大丈夫よ、イスミ。ありがとう」
「せっかくの優勝なんですから、もう少しあかるくいきましょうよ」
よほど元気がないように見えているのか、同じようにイスミにも心配される。うーん、そこまで元気がないわけでもないんだけど……。
「全く、優勝しておいて何でそんな顔しているのよ」
「あんたには関係ないでしょ、サキ」
「関係はないけど、気持ちくらいは分かるわよ」
閉会式が続いていく中で、サキが小声で話しかけてくる。彼女は別のクラスなのに、何でここにいるのやら。
「あのハクアっていう先輩の実力は、私も想像していた以上のものだった。現に私は指一本も触れられないまま、負けたわけだし」
「私も……全力で戦った。でも最後は傷一つもついていなかった。そう考えると私もまだまだなんだって思うと、優勝って実感が湧かないのよ」
「その想いは次にとっておくしかないわね」
「そうね。まだあなたとも決着ついていないし」
「私はいつでも戦う準備はできているわよ、ユーリティア。早ければこの閉会式が終わったあとにでも」
「それは勘弁して欲しいんだけど」
誰が好んで体育祭の後にひと勝負するものか。ただでさえ熱もあるのに、それだけは本当に勘弁してほしい。おまけにこのあと、ハクア先輩にも呼び出されているので、丁重にお断りさせてもらった。
「まあ、またいつかは戦ってあげるわよ、サキ」
「本当に?」
「私が覚えていれば、だけど」
「何よそれ、つまんないじゃない」
こんな会話をしている間にも、閉会式は着々と進み、気がつけば閉会式も終了。体育祭はこれにてお開きもなったのだった。
(来年こそは必ず、納得のいく優勝の仕方をしよう)
来年も同じようにいるかは分からないけど、僕は最後にそう誓うのだった。
(って、来年は僕達が三年だから、そもそもいないんだ)
ただ同時に、来年は先輩がいない事に気づいてしまうのだった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
体育祭かが終わってしばらくして、僕はハクア先輩に呼ばれて生徒会室へとやって来ていた。
「今日は体育祭優勝、おめでとう」
入るなりハクア先輩に祝福される僕。祝ってはくれているのだろうが、どうも感情の起伏が見られないせいか祝われている。最後の体育祭を、ある意味潰してしまったようなものだから、もしかしたら怒ってもいるのかもしれない。
「ありがとうございますって、何だかいいにくいんですけど」
「別に気にしてない」
「いや、私まだ何も言っていない」
「気にしていない」
どうやらものすごく気にしていらっしゃるようです。
「あの、それで私に話しってなんですか」
「実はあなたに頼みたい事があるの」
「切り替えは早いんですね」
気にしているならそう言ってもらいたいのだけれど、どうやら話しを切り替えるのはものすごい早いらしい。まあ、体育祭事は一旦置いておいて、
「頼みたい事?」
「あなたに生徒会に入ってもらいたい」
「生徒会……ですか?」
「そしてあわよくば私の跡を継いでもらいたい」
「跡をって、生徒会長をですか?」
頷くハクア先輩。僕の常識の中では、生徒会って選挙をして選ぶようなものなんだけど、何か特別なのだろうか。
「生徒会って、選挙とかしないんですか」
「選挙もする。でもユーリティアは特別」
「特別? 私がですか?」
「私の推薦だから、入れてもらえると思う。多分」
「会長の推薦って、私そんな推薦されるような事はしていないですよ」
おまけに生徒会長だなんて、ユーリティアならともかく、僕なんかがそんな器な訳がない。一体何を考えて先輩は、ユーリティアを推薦しようとしているのだろうか。
「噂はずっと聞いていた。私達の後輩にかなりの実力をもつ魔法使いがいるって」
「私そんな褒められるほどの実力は持ってないですよ」
「今日の騎馬戦で手を合わせて分かった。あなたなら私の跡を継げるって。むしろあなたしかいない」
「騎馬戦、私負けたんですけど」
あんな不甲斐ない結果で、推薦される理由なんてやはり見当がつかない。
「お願い、生徒会に入って」
それでも一歩も引かない先輩。僕はかなり悩んだ末に、
「数日だけ時間をくれませんか? すぐには決められないので」
少しだけ時間をもらう事にしたのだった。
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