この異世界は小説でできています
Page.18 実力の違い
正直僕の中では勝算があるかは分からなかった。先程のあの魔法を見させられた事もあっって、もしかしたら勝ち目がないのではないかとさえ思ってしまう。何せ僕は彼女の攻撃を察知すらできていなかったのだから。
(それはサキも一緒だし、ハクア先輩は僕が考えている以上に)
「お嬢様、伏せてください!」
「え?」
キリハの声で現実に戻った僕は、彼女の言う通り頭を下げる。すると頭上には先程の威力と同等の風属性の魔法が通過した。
「それ、避けても無駄」
だがすぐにそれは方向を変換して、僕達の方へと向かってきた。僕は避けられないと判断しながらも、咄嗟に風を冷気で凍らす事によって、ダメージを避けられた。
「私の凍らすなんて……面白い」
「私も簡単には負けたくないんですよ。無理をしてまで体育祭に参加したんですから」
「体調……悪いの?」
「朝から熱がありました。けど私は、この一ヶ月の練習を無駄にしないためにも、簡単に休もうなんてできなかったんです」
会話をしながら僕は次の一手を考える。あの追尾性のある魔法は少々厄介だ。だからと言って凍らし続けてもキリがない。
「今度はこっちから行かせてもらいます」
手に氷を宿らせた後、僕は先程用いた手段と同じように、宙へと舞った。作戦はある。
「今度は直接……」
そこを狙って再びあの魔法を放ってくる先輩。僕はその風を凍らせて、一本の道を作り上げた。出所は一緒なのだから、この氷の上を走っていけば勢いもつけられる。
「氷で道を……。なら、私も」
それに乗じて先輩もその氷の道を登る。そして丁度氷の道のど真ん中で、僕達は初めて直接対峙する事になった。
「ここからは小細工なしですよ」
「勝つのは私」
相手が果たしてどのくらい強いかはわからない。でも、それだからどうした。今僕が出せる力をぶつければいい。それでも敵わなかったら、彼女の強さは本物で、また新しい目標ができる。
「お嬢様、決めちゃってください!」
「お姉様!」
声援が聞こえる。もはや対決は騎馬戦とは言えなくなってきているけど、この応援には答えられる結果を残したい。僕は宿らした氷を刃に変えて先輩に斬りかかった。
「甘い」
それに対して近距離で魔法が唱えられる。ほぼゼロ距離からの攻撃ではあるものの、僕はその魔法を今度は別の使い道として利用した。
「私の魔法が氷の刃に吸い込まれて」
「少々卑怯ですがこの氷の刃には、魔法吸収の魔法を乗せておきました。これが今私が使える全力です」
以前使った上級魔法を使用するのも良かったと思う。だけど、こうして直接殴り合いみたいな形になったのだから、たまにはこういう戦い方もありかなって思った。
「終わりです、先輩」
僕は風を纏った氷の刃を使って、先輩を氷の道の外、つまり場外へと吹き飛ばした。
「やった」
これで勝ったと思った瞬間、背中に狂熱な痛みを感じた。
「あがっ」
まさか……。
「私にとって風は私そのもの。こんな攻撃では倒せない」
飛ばされたと思った先輩の方は、風を使って宙へと浮いていた。それに対して空中に立てるような魔法を持ってない僕は、まさに追い風と言わんばかりに氷の道から落下しそのまま地面にこんにちはしてしまったのだった。
こうして、僕と学校一の天才の初めての対決は、学校一の天才に軍配があがったのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「お疲れ様ですお嬢様」
騎馬戦終了後、負けた事がショックだった僕は一人黄昏ていた。そんな僕に対して、キリハは飲み物を持ってきてくれる。
「ありがとうキリハ」
僕はそれを受け取り、一杯飲んで一息つく。
「この後閉幕式ですけど、参加しないんですか?」
「参加するわよ勿論。結果は見ないといけないし。でもその前に一人になりたかったの」
「そうですか」
僕は全力で戦った。その結果負けたのだから、それが今の僕の実力なのも理解している。でも何が一番悔しかったって、あれだけ全力を出したのに、先輩の方はほとんど無傷だったということ。
(最後の最後まで、余裕そうだったもんなぁ)
「ねえキリハ」
「はい」
「私頑張ったんだよね」
「勿論」
「体調が万全ではなくても、最後までやりきったのよね」
「やりきりました」
「それでも、どうして私は、傷一つつけられなかったの……」
それが一番悔しかった。まるで僕のここまでの努力が嘲笑われたようなそんな感覚。それがとても悔しくて……。
「ユーリティア」
するとタイミンングがいいのか悪いのか、ハクア先輩が僕達の目の前に姿を現した。
「どうしたんですか先輩。私をからかいにでも来たんですか」
「違う。体育祭が終わったら話がしたい」
「話……ですか?」
「終わったら校庭で待ってる」
それだけ言い残して、先輩は僕達の前から去っていった。
「話……一体何なのでしょうか」
「さあ? 私にもさっぱり」
「とりあえず閉会式ですし、そろそろ行きませんか」
「あ、うん」
キリハが差し伸べた手を取り、僕達は歩き出す。
「私も悔しいんですよ、お嬢様」
「え?」
「私もお嬢様を勝たせてあげたかったんです。しかし彼女の実力はそれを上回っていたんです」
「……」
「今度は勝てるように、もっと努力をしましょう」
「……うん」
(それはサキも一緒だし、ハクア先輩は僕が考えている以上に)
「お嬢様、伏せてください!」
「え?」
キリハの声で現実に戻った僕は、彼女の言う通り頭を下げる。すると頭上には先程の威力と同等の風属性の魔法が通過した。
「それ、避けても無駄」
だがすぐにそれは方向を変換して、僕達の方へと向かってきた。僕は避けられないと判断しながらも、咄嗟に風を冷気で凍らす事によって、ダメージを避けられた。
「私の凍らすなんて……面白い」
「私も簡単には負けたくないんですよ。無理をしてまで体育祭に参加したんですから」
「体調……悪いの?」
「朝から熱がありました。けど私は、この一ヶ月の練習を無駄にしないためにも、簡単に休もうなんてできなかったんです」
会話をしながら僕は次の一手を考える。あの追尾性のある魔法は少々厄介だ。だからと言って凍らし続けてもキリがない。
「今度はこっちから行かせてもらいます」
手に氷を宿らせた後、僕は先程用いた手段と同じように、宙へと舞った。作戦はある。
「今度は直接……」
そこを狙って再びあの魔法を放ってくる先輩。僕はその風を凍らせて、一本の道を作り上げた。出所は一緒なのだから、この氷の上を走っていけば勢いもつけられる。
「氷で道を……。なら、私も」
それに乗じて先輩もその氷の道を登る。そして丁度氷の道のど真ん中で、僕達は初めて直接対峙する事になった。
「ここからは小細工なしですよ」
「勝つのは私」
相手が果たしてどのくらい強いかはわからない。でも、それだからどうした。今僕が出せる力をぶつければいい。それでも敵わなかったら、彼女の強さは本物で、また新しい目標ができる。
「お嬢様、決めちゃってください!」
「お姉様!」
声援が聞こえる。もはや対決は騎馬戦とは言えなくなってきているけど、この応援には答えられる結果を残したい。僕は宿らした氷を刃に変えて先輩に斬りかかった。
「甘い」
それに対して近距離で魔法が唱えられる。ほぼゼロ距離からの攻撃ではあるものの、僕はその魔法を今度は別の使い道として利用した。
「私の魔法が氷の刃に吸い込まれて」
「少々卑怯ですがこの氷の刃には、魔法吸収の魔法を乗せておきました。これが今私が使える全力です」
以前使った上級魔法を使用するのも良かったと思う。だけど、こうして直接殴り合いみたいな形になったのだから、たまにはこういう戦い方もありかなって思った。
「終わりです、先輩」
僕は風を纏った氷の刃を使って、先輩を氷の道の外、つまり場外へと吹き飛ばした。
「やった」
これで勝ったと思った瞬間、背中に狂熱な痛みを感じた。
「あがっ」
まさか……。
「私にとって風は私そのもの。こんな攻撃では倒せない」
飛ばされたと思った先輩の方は、風を使って宙へと浮いていた。それに対して空中に立てるような魔法を持ってない僕は、まさに追い風と言わんばかりに氷の道から落下しそのまま地面にこんにちはしてしまったのだった。
こうして、僕と学校一の天才の初めての対決は、学校一の天才に軍配があがったのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「お疲れ様ですお嬢様」
騎馬戦終了後、負けた事がショックだった僕は一人黄昏ていた。そんな僕に対して、キリハは飲み物を持ってきてくれる。
「ありがとうキリハ」
僕はそれを受け取り、一杯飲んで一息つく。
「この後閉幕式ですけど、参加しないんですか?」
「参加するわよ勿論。結果は見ないといけないし。でもその前に一人になりたかったの」
「そうですか」
僕は全力で戦った。その結果負けたのだから、それが今の僕の実力なのも理解している。でも何が一番悔しかったって、あれだけ全力を出したのに、先輩の方はほとんど無傷だったということ。
(最後の最後まで、余裕そうだったもんなぁ)
「ねえキリハ」
「はい」
「私頑張ったんだよね」
「勿論」
「体調が万全ではなくても、最後までやりきったのよね」
「やりきりました」
「それでも、どうして私は、傷一つつけられなかったの……」
それが一番悔しかった。まるで僕のここまでの努力が嘲笑われたようなそんな感覚。それがとても悔しくて……。
「ユーリティア」
するとタイミンングがいいのか悪いのか、ハクア先輩が僕達の目の前に姿を現した。
「どうしたんですか先輩。私をからかいにでも来たんですか」
「違う。体育祭が終わったら話がしたい」
「話……ですか?」
「終わったら校庭で待ってる」
それだけ言い残して、先輩は僕達の前から去っていった。
「話……一体何なのでしょうか」
「さあ? 私にもさっぱり」
「とりあえず閉会式ですし、そろそろ行きませんか」
「あ、うん」
キリハが差し伸べた手を取り、僕達は歩き出す。
「私も悔しいんですよ、お嬢様」
「え?」
「私もお嬢様を勝たせてあげたかったんです。しかし彼女の実力はそれを上回っていたんです」
「……」
「今度は勝てるように、もっと努力をしましょう」
「……うん」
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