この異世界は小説でできています
Page.13 それが自分の意志だから
当日の朝、未だに熱が引かない状態で朝食を食べる事になったのだけど、当然の事ながら食欲なんて湧いてこなかった。
「どうかされましたかお嬢様。お食べになられないのですか?」
「え、あ、勿論食べるわよ。食べないと運動なんてできないし」
「お嬢様、おでこを貸してください」
「え?」
キリハがおでこをくっつけてくる。誤魔化そうと思っていたけど、やはり彼女にはお見通しだったらしい。
しばらくおでこをつけ、離した後キリハはため息をついた。
「はぁ……。だからあれほど無理はしないでくださいって言ったじゃないですか」
「ごめんなさい。でも私、体育祭を休むなんてことはできない。ここまで頑張ってきたんだもん」
確かに熱は出ているけど、こんなところで僕は諦めるなんて気持ちは湧いてこなかった。折角ここまで練習してきたのだし、サキとの約束だってある。
「そう言うとは思っていましたけど、今の感じだとかなり熱がありますよ」
「お姉様、あまり無理するとかえってその後が辛いとわたくしは思います」
キリハに続いて、イスミにも促される。それでも僕は、まるで駄々っ子のように諦めようとはしなかった。
「無理は承知だけど、出場競技を減らしてでも私は体育祭に参加する。その後に高熱を出そうが何をしようが、ここまでの練習を無駄になんてできない」
「お嬢様……」
こんな自分の我儘を通すなんて初めてだった。かつて生きていた頃は、我儘を言ってもいい環境でありながらも、それをグッと堪えてきていた。
でも今の自分はどこか違う気がした。我儘だと分かっていても、それを通したい、その気持ちが一番高かった。
「そこまでやりたいという意志があるなら、私は止めるのを諦めます。しかし、これだけは守ってほしいことがあります」
「何?」
「私が 用意した衣装、ちゃんと着てくださいね」
「そこだけは揺るがないのねあんた」
かくして僕は、多少の熱がありながらも体育祭に参加することになった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
朝八時過ぎ、多少フラフラになりながらも登校。天気は快晴なだけあって、僕はグラウンドに立つことすらも少し辛い状況だった。
「おはようユーちゃん! 朝早いね」
「おはようユナ。体育祭だからつい張り切っちゃって」
「ユーちゃんらしいね」
僕達が登校して少しした後にユナも登校してくる。クラスメイトも徐々に集まってきていて、皆着替えをし始めていた。
勿論僕も着替えなければならないのだけど、僕はそれを躊躇っていた。先程キリハから今日の為の着替えを渡されたのだけれど、それをここで着替えるのはちょっと厳しい気がした。
「どうしたのですかお嬢様。早く着替えましょうよ」
「あんた分かっていて言っているわよね」
「さあそれはどうでしょうか」
「顔がニヤついているわよ」
相手は病人だというのに、なんとも鬼畜なメイドだこと。これをいつ、どのタイミングで着ればいいのだろうか。こんな……こんな……。
こんなレオタードを。
「もしかして今回のこれも……」
「勿論特注品ですよ。お嬢様に全て合った特別品です」
「どうしてそういう所にだけ力を入れるのよ」
こういうの着るのって、体操部の人とかくらいで自分が決して着るようなものではない。おまけに体育祭という公の場で、なおかつ風邪を引いているこの状態で。どこの誰がこんなレオタードを着るのだろうか。
「さっきから何を喧嘩しているのユーちゃん」
「いや、ちょっとキリハがね」
「さっっき鞄の隙間からチラッて見えたんだけど、ユーちゃん今日運動着着ないの?」
「み、見たのあれ。別に私だって着たくて着るんじゃなくて……」
「私はあっちの方が似合うと思うけど」
「そんな訳ないでしょ!」
そんなやり取りをしている間にも、体育祭が始まるまでの時間も近づいている。僕はトイレに行って着替えるという選択肢を取った。
そして五分後。
「……」
「きゃー、可愛いユーちゃん」
教室に戻った私に、黄色い歓声が響く。季節が梅雨に近い事もあってか、体は少し寒く感じられる。今日一日をこれで過ごすなんて、学校側も許可を取ったなと思う。
「相変わらず何でもお似合いですね、お嬢様」
「それ褒めてないわよね絶対」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
結局僕は、こn恥ずかしい格好の上からジャージを着て開会式まっでは誤魔化す事に。キリハは上に何かを着るなんて勿体無いと言っていたけど、始まりから終わりまでレオタードで過ごしたら絶対にトラウマになる。
「おはようユーリティア。今日は負けないわよ」
グラウンドに出てすぐにサキと遭遇する。彼女は僕と違って体調も良好だし、変な格好もしていない。もしかしたら今日は色々な面で不利な戦いになるかもしれない。
「私こそ。去年のリベンジは絶対に果たすんだから」
「それでこそ私のライバル。今日はあなたをまた倒せると考えるとすごくゾクゾクしているの」
「果たしてそう簡単にうまくいくかしらね」
ライバル同士らしい会話をする僕とサキ。
(たとえ体調が悪くても、絶対負けられない)
この一ヶ月の集大成の体育祭が、いよいよ幕を開けようとしている。
「ところで一つ聞いていい?」
「何?」
「さっきちらっとトイレで見かけたんだけど、何か運動着とは違うもの着ていなかった?」
「どうかされましたかお嬢様。お食べになられないのですか?」
「え、あ、勿論食べるわよ。食べないと運動なんてできないし」
「お嬢様、おでこを貸してください」
「え?」
キリハがおでこをくっつけてくる。誤魔化そうと思っていたけど、やはり彼女にはお見通しだったらしい。
しばらくおでこをつけ、離した後キリハはため息をついた。
「はぁ……。だからあれほど無理はしないでくださいって言ったじゃないですか」
「ごめんなさい。でも私、体育祭を休むなんてことはできない。ここまで頑張ってきたんだもん」
確かに熱は出ているけど、こんなところで僕は諦めるなんて気持ちは湧いてこなかった。折角ここまで練習してきたのだし、サキとの約束だってある。
「そう言うとは思っていましたけど、今の感じだとかなり熱がありますよ」
「お姉様、あまり無理するとかえってその後が辛いとわたくしは思います」
キリハに続いて、イスミにも促される。それでも僕は、まるで駄々っ子のように諦めようとはしなかった。
「無理は承知だけど、出場競技を減らしてでも私は体育祭に参加する。その後に高熱を出そうが何をしようが、ここまでの練習を無駄になんてできない」
「お嬢様……」
こんな自分の我儘を通すなんて初めてだった。かつて生きていた頃は、我儘を言ってもいい環境でありながらも、それをグッと堪えてきていた。
でも今の自分はどこか違う気がした。我儘だと分かっていても、それを通したい、その気持ちが一番高かった。
「そこまでやりたいという意志があるなら、私は止めるのを諦めます。しかし、これだけは守ってほしいことがあります」
「何?」
「私が 用意した衣装、ちゃんと着てくださいね」
「そこだけは揺るがないのねあんた」
かくして僕は、多少の熱がありながらも体育祭に参加することになった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
朝八時過ぎ、多少フラフラになりながらも登校。天気は快晴なだけあって、僕はグラウンドに立つことすらも少し辛い状況だった。
「おはようユーちゃん! 朝早いね」
「おはようユナ。体育祭だからつい張り切っちゃって」
「ユーちゃんらしいね」
僕達が登校して少しした後にユナも登校してくる。クラスメイトも徐々に集まってきていて、皆着替えをし始めていた。
勿論僕も着替えなければならないのだけど、僕はそれを躊躇っていた。先程キリハから今日の為の着替えを渡されたのだけれど、それをここで着替えるのはちょっと厳しい気がした。
「どうしたのですかお嬢様。早く着替えましょうよ」
「あんた分かっていて言っているわよね」
「さあそれはどうでしょうか」
「顔がニヤついているわよ」
相手は病人だというのに、なんとも鬼畜なメイドだこと。これをいつ、どのタイミングで着ればいいのだろうか。こんな……こんな……。
こんなレオタードを。
「もしかして今回のこれも……」
「勿論特注品ですよ。お嬢様に全て合った特別品です」
「どうしてそういう所にだけ力を入れるのよ」
こういうの着るのって、体操部の人とかくらいで自分が決して着るようなものではない。おまけに体育祭という公の場で、なおかつ風邪を引いているこの状態で。どこの誰がこんなレオタードを着るのだろうか。
「さっきから何を喧嘩しているのユーちゃん」
「いや、ちょっとキリハがね」
「さっっき鞄の隙間からチラッて見えたんだけど、ユーちゃん今日運動着着ないの?」
「み、見たのあれ。別に私だって着たくて着るんじゃなくて……」
「私はあっちの方が似合うと思うけど」
「そんな訳ないでしょ!」
そんなやり取りをしている間にも、体育祭が始まるまでの時間も近づいている。僕はトイレに行って着替えるという選択肢を取った。
そして五分後。
「……」
「きゃー、可愛いユーちゃん」
教室に戻った私に、黄色い歓声が響く。季節が梅雨に近い事もあってか、体は少し寒く感じられる。今日一日をこれで過ごすなんて、学校側も許可を取ったなと思う。
「相変わらず何でもお似合いですね、お嬢様」
「それ褒めてないわよね絶対」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
結局僕は、こn恥ずかしい格好の上からジャージを着て開会式まっでは誤魔化す事に。キリハは上に何かを着るなんて勿体無いと言っていたけど、始まりから終わりまでレオタードで過ごしたら絶対にトラウマになる。
「おはようユーリティア。今日は負けないわよ」
グラウンドに出てすぐにサキと遭遇する。彼女は僕と違って体調も良好だし、変な格好もしていない。もしかしたら今日は色々な面で不利な戦いになるかもしれない。
「私こそ。去年のリベンジは絶対に果たすんだから」
「それでこそ私のライバル。今日はあなたをまた倒せると考えるとすごくゾクゾクしているの」
「果たしてそう簡単にうまくいくかしらね」
ライバル同士らしい会話をする僕とサキ。
(たとえ体調が悪くても、絶対負けられない)
この一ヶ月の集大成の体育祭が、いよいよ幕を開けようとしている。
「ところで一つ聞いていい?」
「何?」
「さっきちらっとトイレで見かけたんだけど、何か運動着とは違うもの着ていなかった?」
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