この異世界は小説でできています
Page.04 前夜に咲きしは薔薇の花 前編
学校から帰宅してすぐ、夕食をとる前に踊りの練習をしてくださいとキリハが言い出したので、早速練習場へ。
「ここって明日舞踏会で使う場所じゃないの?」
「本番実践さながらの練習をした方がいいかなと思いまして」
「本番実践さながらの練習ね……」
まずそれ以前の問題で、僕はその踊りを知らないのですが。もしかしたら日本でもよくやるああいうダンスでもやるのだろうか。確かそういうのって社交ダンスと言ったはずだけど。
(テレビの見よう見まねでもしかしたらできるかもしれない)
そう思っていた時期もありました。
約五分後。
「お嬢様、もしかして今までの練習を全て忘れていますか?」
「そ、そうじゃないわよ。ただ、ここはどうやるんだっけなって思っただけで」
「まだ出だしなんですが、それは」
僕の想像を遥かに超えていたダンスに僕は早くも根を上げた。どういう物なのかと言うと、社交ダンスに近いことには近いのだけれど、その踊りのスピードが僕の知っている物と明らかに違っていた。
あれを言葉に表すとしたら。コーヒーカップを最大のスピードで回している中で、社交ダンスをさせられているような物だ。
(こんな物を明日の舞踏会に披露なんてできるのかな)
流石に危機感を覚える。
「ね、ねえキリハ。何であなたは疲れていないのよ」
「お嬢様のように貧弱な体ではございませんので」
「あの、私一応部長をやっているんだけど」
部長が貧弱なんて言われたら、元も子もない気がする。まあ今の僕はある意味貧弱ではあるのだけれど。
「それにしても、まさか前日になって全部忘れただなんて、私も流石に予想外ですよお嬢様」
「ご、ごめんなさい。次はちゃんとやるから」
二度目のチャレンジ。
「少しはマシになっていますが、明らかに私の動きに全て任せっきりになっているような気がしますが」
「そ、そうでも……しないと、長くはもたないと
……思ったから」
「でも本番踊るのは、私とではないんですよ?」
「あ」
それから二時間後。
もはや何度目かを数えるのが面倒くさくなっったくらいの回数の練習を重ね、僕はなんとかいじで踊りを身につけることに成功。
「まだまだ完璧というには程遠いですが、続きは夕食を取った後にしましょう」
「は……はい」
疲労が溜まったせいか、いつの間にか敬語で喋るようになってしまった僕。小説の時でもそうだったけど、主人公は一晩で何とか踊れるようになるまで成長した。
そんな事普通ならありえない話だけれど、ユーリティアの身体自体が動きを覚えているからなのか、自然とその動きをできるようになっていた。
(部活の時の魔法もそうだったけど、元から備わっている物は備わっているんだ)
その代わり記憶系が残っていないために、テストは駄目だったのかもしれない。もらった能力以上の力が彼女にはあ
るなら、それって……。
「お嬢様、先に私行きますよ? そしてお嬢様の分はしっかりと食べておきますから」
「どこがしっかりなのよ、馬鹿メイド」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
夕食を食べた後も練習は続き、気づけば真夜中の二時。明日も学校があるという事でようやくキリハの練習から解放された。
(やっと……一人きりになれた)
ダンスの練習の疲れを取るために僕は、眠る前に温泉に浸かっていた(当然ながら女湯)。時間が時間なだけに、  今は誰も入っておらず変な緊張感を持たずにゆっくりと温泉を堪能していた。
(自宅に温泉って、やっぱり凄いなお金持ちは)
しかも温泉の広さも、泳いで遊べるんじゃないかって思えるくらいの大きさ。その大きさを見て、自分には勿体無いなとすら思えてくる。
「ああ、生き返るなぁ」
「あなたもそう思いますか?」
「ふぇ?」
一人のはずなのに突然返事が返ってきたので思わず変な声を出してしまう。この声、キリハではないみたいだし、一体誰がこんな時間に……。
「だ、誰」
「あら、ごめんなさい。別に驚かすつもりじゃなかったのだけど」
風呂が広いのと湯気が立ち上っていたので気がつかなかったが、一人だと思っていたがどうやら先客がいたらしい。
「わたくし明日の舞踏会の為にこちらに宿泊させられてもらっていますイスミと申します」
「声だけで自己紹介しないで、姿を見せなさいよ」
「それは失礼いたしました」
温泉の中を歩いてくる音が聞こえる。そして湯気の中から人影がくっきりと見え始め、イスミという女性の姿がしばらくして見えた。
「その姿、もしかしてこちらの家のお嬢様であるユーリティアさんでございますか?」
「そ、そうよ」
湯気の中から姿を現した女性は、いかにも大人びいた女性で、ユーリティアより何歳か年上だと思われる。今の話から察すると、恐らく彼女もどこかのお嬢様なのだろう。
「まさかこんな所でお会いする事になるとは思っていませんでしたわ」
「わ、私もこんな時間に誰かが入っているなんて思っていなかったわよ」
(僕にとっては予想外のハプニングなんだけど)
僕にとってっは混浴という意味にもなるし、おまけに結構スタイルが良くて思わず目のやり場に困る。彼女も明日の舞踏会に参加するというなら、もしかしたら自分よりも目立ってしまうのではないだろうか。
「私一度あなたと個別でお会いして、お話ししたい事があったんですよ」
「話したい事?」
まさかいきなり命を狙っているとかそんな事言われたりしないよね?
「実はわたくし、あなたを……」
と言いながら魔法を使って、何もない空間から何かを取り出す仕草をするイスミ。まさか剣でも取り出さすのだろうか。
「あなたをわたくしのお嫁にしたいんです」
彼女が取り出したのは花束。しかも薔薇の……。
「はい?」
あなた女性ですよね?
「ここって明日舞踏会で使う場所じゃないの?」
「本番実践さながらの練習をした方がいいかなと思いまして」
「本番実践さながらの練習ね……」
まずそれ以前の問題で、僕はその踊りを知らないのですが。もしかしたら日本でもよくやるああいうダンスでもやるのだろうか。確かそういうのって社交ダンスと言ったはずだけど。
(テレビの見よう見まねでもしかしたらできるかもしれない)
そう思っていた時期もありました。
約五分後。
「お嬢様、もしかして今までの練習を全て忘れていますか?」
「そ、そうじゃないわよ。ただ、ここはどうやるんだっけなって思っただけで」
「まだ出だしなんですが、それは」
僕の想像を遥かに超えていたダンスに僕は早くも根を上げた。どういう物なのかと言うと、社交ダンスに近いことには近いのだけれど、その踊りのスピードが僕の知っている物と明らかに違っていた。
あれを言葉に表すとしたら。コーヒーカップを最大のスピードで回している中で、社交ダンスをさせられているような物だ。
(こんな物を明日の舞踏会に披露なんてできるのかな)
流石に危機感を覚える。
「ね、ねえキリハ。何であなたは疲れていないのよ」
「お嬢様のように貧弱な体ではございませんので」
「あの、私一応部長をやっているんだけど」
部長が貧弱なんて言われたら、元も子もない気がする。まあ今の僕はある意味貧弱ではあるのだけれど。
「それにしても、まさか前日になって全部忘れただなんて、私も流石に予想外ですよお嬢様」
「ご、ごめんなさい。次はちゃんとやるから」
二度目のチャレンジ。
「少しはマシになっていますが、明らかに私の動きに全て任せっきりになっているような気がしますが」
「そ、そうでも……しないと、長くはもたないと
……思ったから」
「でも本番踊るのは、私とではないんですよ?」
「あ」
それから二時間後。
もはや何度目かを数えるのが面倒くさくなっったくらいの回数の練習を重ね、僕はなんとかいじで踊りを身につけることに成功。
「まだまだ完璧というには程遠いですが、続きは夕食を取った後にしましょう」
「は……はい」
疲労が溜まったせいか、いつの間にか敬語で喋るようになってしまった僕。小説の時でもそうだったけど、主人公は一晩で何とか踊れるようになるまで成長した。
そんな事普通ならありえない話だけれど、ユーリティアの身体自体が動きを覚えているからなのか、自然とその動きをできるようになっていた。
(部活の時の魔法もそうだったけど、元から備わっている物は備わっているんだ)
その代わり記憶系が残っていないために、テストは駄目だったのかもしれない。もらった能力以上の力が彼女にはあ
るなら、それって……。
「お嬢様、先に私行きますよ? そしてお嬢様の分はしっかりと食べておきますから」
「どこがしっかりなのよ、馬鹿メイド」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
夕食を食べた後も練習は続き、気づけば真夜中の二時。明日も学校があるという事でようやくキリハの練習から解放された。
(やっと……一人きりになれた)
ダンスの練習の疲れを取るために僕は、眠る前に温泉に浸かっていた(当然ながら女湯)。時間が時間なだけに、  今は誰も入っておらず変な緊張感を持たずにゆっくりと温泉を堪能していた。
(自宅に温泉って、やっぱり凄いなお金持ちは)
しかも温泉の広さも、泳いで遊べるんじゃないかって思えるくらいの大きさ。その大きさを見て、自分には勿体無いなとすら思えてくる。
「ああ、生き返るなぁ」
「あなたもそう思いますか?」
「ふぇ?」
一人のはずなのに突然返事が返ってきたので思わず変な声を出してしまう。この声、キリハではないみたいだし、一体誰がこんな時間に……。
「だ、誰」
「あら、ごめんなさい。別に驚かすつもりじゃなかったのだけど」
風呂が広いのと湯気が立ち上っていたので気がつかなかったが、一人だと思っていたがどうやら先客がいたらしい。
「わたくし明日の舞踏会の為にこちらに宿泊させられてもらっていますイスミと申します」
「声だけで自己紹介しないで、姿を見せなさいよ」
「それは失礼いたしました」
温泉の中を歩いてくる音が聞こえる。そして湯気の中から人影がくっきりと見え始め、イスミという女性の姿がしばらくして見えた。
「その姿、もしかしてこちらの家のお嬢様であるユーリティアさんでございますか?」
「そ、そうよ」
湯気の中から姿を現した女性は、いかにも大人びいた女性で、ユーリティアより何歳か年上だと思われる。今の話から察すると、恐らく彼女もどこかのお嬢様なのだろう。
「まさかこんな所でお会いする事になるとは思っていませんでしたわ」
「わ、私もこんな時間に誰かが入っているなんて思っていなかったわよ」
(僕にとっては予想外のハプニングなんだけど)
僕にとってっは混浴という意味にもなるし、おまけに結構スタイルが良くて思わず目のやり場に困る。彼女も明日の舞踏会に参加するというなら、もしかしたら自分よりも目立ってしまうのではないだろうか。
「私一度あなたと個別でお会いして、お話ししたい事があったんですよ」
「話したい事?」
まさかいきなり命を狙っているとかそんな事言われたりしないよね?
「実はわたくし、あなたを……」
と言いながら魔法を使って、何もない空間から何かを取り出す仕草をするイスミ。まさか剣でも取り出さすのだろうか。
「あなたをわたくしのお嫁にしたいんです」
彼女が取り出したのは花束。しかも薔薇の……。
「はい?」
あなた女性ですよね?
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