Opening Is Empty

些稚絃羽

パレード

朝か 昼か 夕か 夜か
いずれともつかぬ薄闇の中で息を殺して縮こまる
ささくれ立った皮膚の隙間 剥き出しの僕に風が痛い
つまりは僕の身体は正常で
つまりは聞こえない耳も正常らしい

ルラ ルラ ルララ
覚えたてのメロディーを口ずさむ
高い音が上手く出ない だけど教えてくれる人はいない
響かせようと合わせた手も空振っては指に傷が増えた

呼んで 呼んで 僕の名を
付属の詩はこんなだった? 初めからなかったかもしれない
呼んで 呼んで 僕の名を
しっくりこないがそれでいい 初めから誰も聞いちゃいない

広くて狭い世界の中に充満していく僕の音
散らかした言葉の粒に何かの光が反射した
重い瞼を上げて見れば パレード率いるヘッドライト
僕を捉えて離さない

「一緒に歌おう 踊ろう、キミと
 華やかなパレードはキミのため」


朝か 昼か 夕か 夜か
いずれにも見えぬ目映さの中で意図して伸ばした膝が軋む
引かれて立ったパレードの間 呼ばれた名前に背中が痒い
やはり僕の身体は正常で
やはり聞こえた耳も正常らしい

ルラ ルラ ルララ
何度目かのメロディーを口ずさむ
震えて声が上手く出ない だけど指差し笑う人はいない
声の代わりに合わせた手を鳴る前に握る感触がする

ルラ ルラ ルララ
大きな顔した人形達が奇妙なステップで踊り出す
ルラ ルラ ルララ
調子外れたハミングも皆で歌えば僕らの唄に

狭くて広い世界の中に昇華していく僕らの音
天に向けて放った粒に幾多の色が反射した
瞼を閉ざすのも許さない パレード照らすスターライト
僕を捉えて離さない

「一緒に歌おう 踊ろう、キミと
 時忘れるパレードはキミのため」


辿り着く終末は暗闇の真ん中
いざなわれ 導かれ
引き連れた光源も溶けていくよ
吸い取られてくメロディーの中で
すべてが耳元で囁いた

「一緒に歌い 踊った、キミと
 どうも僕らと合わないらしい」


瞼の裏より濃い闇の歪なパレードが動き出す

  

「Opening Is Empty」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「詩」の人気作品

コメント

コメントを書く